愛というものは相手に示さなければならないものらしい。例えば言葉だとかキスなどの行為で。
メディアで取り上げられる恋愛は大抵がそういうものだ。だからおそらく恋愛というものはそういうもので、一般の恋人達もそういうことをしているのだろう。

なのに俺達ときたら

「俺って変かな」




雑誌に気を取られていた。風丸はノートに向かったままだが、2人きりなので俺に話しかけているのだろう。
「…どこが」
「恋人といるのに宿題なんかして さ」
風丸は俺が来る前から机に向かっていた。この折りたたみ式の机は部屋の大きさの割には大きく、他の家具との関係上、俺と風丸は向かい合って座らなければならない。つまり風丸まで遠い。勉強机もあるのだが上は教科書が山積みになっていた。
「別に俺達、最初からそうじゃん」
「そうなんだよな」
「なにお前、もっと恋人同士らしいことしたいの」
「いや…うーん…」

「鬼道に怒られた」
「はあ?」
「普段俺達がしてること話したら『なんだそれは』って」
「なんだそりゃ。あいつそんなこと」
「お前のことが気になるんだよ、きっと」
そう言いながら風丸はペンをくるくる回す。そういえば今日はまだ風丸に触れていないし、触れられてもいない。足を伸ばそうとしてテーブルの下で風丸の足を蹴飛ばしたくらいだ。
「まあ、確かに昼間は恋人らしいことしてねぇな」
「『昼間は』とか言うなよ」
風丸は笑った。
恋人同士らしく、か。
「あんま変なことしなくていいぜ、俺だって、お前に…そういうことできねえから」
あ、今変なこと言ったな。
少し恥ずかしくなって風丸に軽く背を向けた。
「確かに不動、全然そういうことしてくれないよなー。好きって言ってもらったこともないし、甘えることもないし」
「なっ……そ、ぅ…」
「冗談冗談」
言い返せず言葉を濁す俺を見て風丸は笑った。
「この部屋な、不動は狭い狭いっていうけど、1人だと十分広いんだ」
「…は?」
「だから、この部屋を狭く感じてる今、俺は幸せだし、すごく嬉しいんだよ」
「…ふーん」
「一緒に眠ればベッドが狭いし、たい焼きもクレープも半分じゃ物足りないし、缶ジュースを買えばお前『一口』とか言って半分くらい飲むだろ」
「わ、悪かったな」
「でもそういうのが、全部全部幸せなんだ」
こんなセリフを平気で言える風丸を心から尊敬した。俺は熱い頬を冷ますのに必死だってのに。
「俺はそんな風に思ってます。不動は?」
「……まぁ…俺も、それでいいや」

「はい、宿題終わり」
風丸が机を跨いで俺の横に座る。指先がそっと触れる。
「やっと不動に触れた」
俺達ときたら、これだけで十分だと思えるのだから、安いものだ。
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お久しぶりです。
また風丸に恥ずかしいセリフ言わせちゃいました。というかむしろ風丸だから言える!そしてそんな風丸が大好きな明王!やっぱり風不が一番!
2011/06/14
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