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パロディーで、堅物委員長×不良生徒な風不

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「不動明王!そこで何してる!」

それが初めてあいつにかけられた言葉だった。
















今日はずいぶんと空が青い。風が強く、雲は足早に視界から外れていく。
この第3校舎は専門教室が多いため人も少なく、この屋上はいつ来ても誰もいない。
ただし、最近はやっかいな奴が出入りしている。

「お前も懲りないな」

体を起して、声の方向を確認する。俺の足元から顔を出していたのは、空とは違う独特の青い髪を持った同級生だった。

「チッ…」
「こんなとこまで、よく上ったな」
「また来たのかよ」
「さすがに寒くないか?ここ」

風が強く吹いたようで、彼の特徴であるポニーテールが太陽の光を浴びてキラキラと輝く。
俺のお気に入りの屋上に来るのは俺と、この物好きな学級委員長さんだけだ。
風丸一郎太。第2学年の学級委員長。
学年代表、となると大体がこいつで、特に目立った行動はしていないにしても、この容姿のせいかかなりの有名人だ。成績優秀、美系で男女問わず優しく(俺の意見ではない)、スポーツもできて、止めに生徒会長ともなれば先輩後輩関係なく女子にはモテモテだ。
ちょうど2カ月程前、風丸に立ち入り禁止のこの場所に入るところを見られた。しつこく注意されて、それ以来俺がここにいると風丸が高確率で登場する。最近では何故か2人でここで過ごすことが多い。こいつのせいで俺がここを立ち退くのは癪だ。それに俺がここに出入りしていることを、教員含め誰にも言っていないようだった。

「不動、ここは立ち入り禁止だ」
「お、久しぶりだねえそのセリフ」

出会って初めの頃は、風丸も毎回本気で俺をここから追い出そうとしていた。「校則違反だ」がメインだったが最近では「危険だから」「お前が怪我したら困る」などなど。というのも、この屋上には落下防止用のフェンスが無い。もともと生徒が出入り出来るように作られていないのだ。しかし無視し続けた結果、今では風丸は俺が屋上から出るまで隣にいるだけ。正直、学級委員長なんてやつと過ごす機会なんて一生ないものだと思ってた。初めの頃はただ真面目なだけの堅物委員長かと思っていたが、最近はとにかく『変なやつ』だな、と。
風丸は俺の隣に座って、空を見上げる。いつもと同じ展開だ。

「気持ちいいな」
「………」

「寒いけど」
「………」

「風が強いな」
「………」

寝転がっている俺に、ぽつぽつと投げる言葉は、いつも返事のいらないもの。
目をつむる。眠ってしまっても、日が沈む前には風丸が起こしてくれる。



「3年になってもここに来るのか?」
「は」

『?』のついたセリフに、思わず風丸を見た。いつも通り空を見ながら、うわ言のようにつぶやいていた。

「……俺に聞いてんの」
「他に誰もいないだろう」
「…まあ、来るんじゃねえの」
「そう」

何の意図があったのか。わけがわからないまま、再び目をつむって空の音に耳をかたむける。

「俺が委員長になった理由」
「は」

唐突すぎる。今日の風丸は様子がおかしい。変な胸騒ぎがしたが、気のせいだと思うことにしよう。

「なんだよ。教えろよ」
「お前のそばにいれる理由が欲しかった」
「なにそれ」

(今のって、女子相手だったら告白だぜ。)
と、からかうのも面白そうだったが、風丸の背中は妙に真剣だったので、やめた。

「生徒会長になれば、問題児のお前に近付く口実が出来る」
「は」
「屋上に入る許可ももらえた」
「……許可もらってんのお前」
「ああ。お前を説得するという条件でな」
「……はああ?!」
「安心しろ、それも今日で最後だから」
「え」

色々聞きたいことが出来た。風丸はずいぶん落ち着き払っていて、俺の脳も冷静にさせた。

「どーゆーことだよ」
「今日で、任期が切れるんだ」
「……許可がなきゃ、屋上にも入れねーの」

許可がなきゃ、俺にも会いに来れないって?
いや、別に会いたいとか、そういうんじゃ…

あれ?

「当たり前だ。校則違反だからな」
「真面目…つか、なんなんだろーなお前」
「堅物ですから」
「自分で言うのかよ」
「お前が言ったんだろ。初めて、ここで」
「そうだっけ」

さっきまで寒かった風を、涼しく感じる。風丸のポニーテールが、サラサラサラサラ、風になびく。いつも通りの風景だ。

最後。
真面目な風丸のことだ、嘘はつかないし、一度決めたことも破らないだろう。
この光景も、今日で最後、か。
チクッと、奥の方が痛んだ。

「で、俺の説得ってのは?ここから出てけばいいの」
「ああ。もうここには来るな」
「やだよ」
「で、サッカー部に戻れ」
「っ----!」

驚いて声が詰まった。

どうして。

いろいろな感情が渦巻いたが、青い空と白い雲が、その感情を抑えていくのがわかった。
また沈黙になって、2人して空を見上げる。

2カ月程前、部活を辞めた。他校と問題を起こしてサッカー部は活動停止。でも俺が辞めたおかげで、すぐ活動再開になった。よかったよかった。これで今週末の大会にも間に合う。
それでいいじゃねえか。

「あの監督に頼まれたわけだ」
「半分正解」
「何がしてーんだよ」
「素直になれ」

そんな簡単になれんなら、部活を辞めたりしない。

「不動はサッカーが好きなんだろ?だったらサッカーをしなきゃだめだ」
「……お前らしいねぇ」
「こんなところにいちゃだめだ」

ここで、こうしてることがだめだって?

「サッカーしてくれ、不動。」

魅入ってしまうほど綺麗で、真剣な顔だった。

「俺がここに来なくなっていいの」
「何言ってるんだ…そんなの、いいに決まってる」

今度はずいぶん切ない表情だ。
この2カ月、何時間も2人で過ごした。それなのにお前が、今日までこのことを言わなかったのには理由があるんだろ。
ずるい。

「お前は素直にならなくていいの」

風丸は俺からの問いかけに目を丸くした。そしてゆっくりゆっくりと、頬を赤らめていく。

「お前がお手本見せてよ。『素直になる』お手本」
「……まいったな」



大分長い沈黙。どんな言葉が聞けるかと、不安とその他いろいろな感情が次々に出てきては風に流されていく。
深呼吸をして、風丸の肩が大きく上下した。

「不動にはサッカー部にもどって欲しい、でも
この時間がなくなるのはいやだ」

鼓動が速くなって体中がむず痒くなる。しかしはっきりと、『嬉しい』と感じている自分がいた。
風丸はまた前を向いてしまって、寝そべっている俺には後ろ姿しか見えない。
俺も、風丸と過ごす時間は嫌じゃない。話は合わないし、気も合わない。なのに嫌じゃない。同じ感情だったことに安心した。心の半分が軽くなって、口角が上がる。

「つまり」




「お前が好きだ」


風丸の声は少し震えていた。
俺は風丸ともう少し一緒にいたくて、それがこいつから聞ければ十分だと思っていた。
『好き』。そんなこと考えたこともなかった。真面目で、堅物な委員長さんが、俺を。

「女にモテモテな生徒会長さんが、男で問題児な俺を?とんだスキャンダルだな」

俺の性格と、ほんの少しの懐疑心がこう言わせた。
風丸が振り向く。目が合いそうになって慌てて目をつむる。嘘をついたのがばれるような気がして。
何かが近付いてくる気配がして慌てて目を開けたが、風丸と俺の唇が重なった後だった。
長い前髪が頬に触れてくすぐったい。

唇をゆっくり離して、体を起こした風丸の顔は見事に真っ赤になっていた。
それでも変に清々しい表情で、俺に笑いかける。

「さあ、どうだ。俺は素直に行動したぞ。次はお前の番だからな」

胸のあたりが何か、暖かいものでいっぱいになっている。今すぐ走り出したい衝動に駆られるが、残念ながらここは狭い給水塔横のスペースだ。
空に引っ張られるように、体がふわっと軽くなり立ちあがる。ふと右下に目を向けると、グラウンドでは見慣れたメンバーがボールを追いかけていた。体が疼く。

「さすが委員長さん」

何かわからないが、原動力のようなものを風丸からもらった気がした。
ありがとう、すら上手く言えない。でもいいか、そんな一言、明日言えばいい。
脳が、グラウンドに向かえ、という指令を出した。空っぽの学生鞄を持って、上ってきた梯子に足をかける。

「もうここには来るなよ」
「あー、まあ、考えといてやるよ」

足を止めて顔を上げると、風丸と目があった。少し寂しそうな表情を浮かべる風丸を見て、今頃になって唇がじわっと暖かくなる。

「あ、あと」

「ついでにお前とのことも、考えといてやる」
「え」





梯子を下りて、走って、階段を駆け下りて、グラウンドに向かった。
2カ月ぶりのグラウンド、監督、チームメイト。

「やっと来たな」

監督からの予想外のセリフに、湧き上がる涙をぐっとこらえた。
屋上から、どっかの委員長さんが見ているような気がしたから。

END
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意外とすんなり書けました堅物委員長×不良生徒で風不!
これを書くにあたって真っ先にしたのが「委員長」と「不良生徒」について辞書を引くことでした笑
堅物と不良を生かすにはやっぱり2人が出会った時のエピソードかなあと思いつつ、結局私の大好きな告白シーンに落ち着きました。私の脳内では出会いからその後まで出来上がっているんですが上手く入れられなかったので後日、時間があればssとかで…書けたらいいなあ。

ちなみに作中には書いてませんが風丸は陸上部に入っています。不動とはクラスも別。
生徒数の多いマンモス校だといいなあと思います。監督はもちろん道也で笑

リクエストありがとうございます!
2011/04/09
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