「ほら、これ」
風丸が差し出したものを目視したあと、不動はいぶかしげに贈り主を見つめた。
「なんだよコレ?お前に何かを贈られるような覚えはねえぞ」
「バレンタインデー。一応、付き合ってるんだし、お前がチョコなんて用意するわけないとわかってたから、オレから」
「……ふん。甘いもんは嫌いじゃねーし、受け取っておいてやる」
無愛想に風丸の手から桃色の包みをもぎとると、ドスッとベッドに腰を下した。
言葉とは裏腹に丁寧な仕草でそれをほどく不動の隣に、風丸がにこにこしたまま陣取る。
「どうせならと思ってうまそうなやつを選んでみたんだ。ナッツ系好きだろ?」
シックな包装からのぞいたのは、一口大の丸っこいチョコレートが6つ。
不動はそのうちの1つをつまみ出し、そのまま口へ放り込んだ。
「ん、別にまずくはねえな」
そう言って、ココアパウダーがついた指をぺろりとなめた。
唾液でてらてら光る指先が妙になまめかしい。
「素直にうまいって言えばいいだろ……」
風丸は苦笑しながらもその動作に引き込まれた。つい、遊び心がうずく。
「口にもついてるぞ、こことか」
親指の腹を不動の口元に押し当て、強めに擦る。
特に抵抗もない不動の様子に、昔を思い出して少し笑ってしまった。
代表として一緒のチームでやっていくことになった当初なら、どんな反応をしたのだろうか。
「何笑ってんだよ。とれたか?」
「ああ、でも今度はオレの指が汚れた。これは不動がきれいにしてくれるんだよな?」
風丸は自分の指先を不動の目の前に差し出してにっこりと笑った。
「……は、はあ!?お前どういうつもり…んぁっ」
反論しかけた不動の口に、無理やり親指をねじこんだ。
歯列をなぞり、舌を圧迫していく。
「かはっ、あ……んんっ」
苦しそうにもがく不動に、風丸は静かに命令した。
「不動、お前が汚したんだからお前がきれいにするんだよ。わかったか?」
人差し指と中指も加えて挿入し、さきほどより優しい手つきで舌と絡ませた。
今度は不動も大人しく、自ら風丸の手をつかんで積極的に舐め始めた。
かすかな水音が部屋に響く。
「これでいいだろ?」
不動が投げやりに言った。
今更ながら自分の行動を恥じてうつむきがちに目を背けている。
「…そうだな。汚れはとれたが、今はお前のよだれでべとべとだ。何かで拭かないとなあ」
「…!?」
風丸は不動の胸のあたりに手をかけた。
唯一上半身に身に付けている薄手のTシャツにじわりと自身の唾液が染み込んでいくのを感じ、不動は小さく身もだえした。
「や、やめろ…気持ち悪ぃ」
「気持ち悪い?ここはこんなになっているのにそれはないだろ」
すでに硬くなっている乳首を布越しに撫でられ、不動は鼻にかかったような甘い声で鳴いた。
風丸は不動のTシャツをたくし上げ腹のあたりに手を這わせるのと同時に、早々に息が上がっている口元に深く吸い付いた。
そのまま顎、首元へと痕跡を残しながら移動していく。
いつのまにか不動も無意識に両腕を風丸の背中に回していた。
しばらく続いた上半身への執拗な愛撫に対して、触れられていないはずの場所の疼きが増していくのに耐えかねて不動が口を開く。
「なん、で上ばっかり……っ」
はた、と風丸が動きを止めた。
「悪い悪い。ここもいじってやらないともう物足りないんだよな」
風丸は自分の右手を唾液で湿らせると、不動の背中側から下着の中に潜り込ませた。
何をされるか気づきビクンと反応した不動をなだめるかのように指先を遊ばせたあと、まず人差し指だけを挿入した。
「…ぅくっ……ん」
これまでさんざん風丸に使われてきたその秘部は少しの刺激でも快感を与えるようだ。
不動は風丸の肩口をがっしりとつかみ、すでにされるがままになっていた。
中指、薬指と増やしていくと自らの知らぬうちにその腰を揺らし始めた。
突然、風丸が再度手を止めた。
不動が指を抜かれた瞬間の快楽の波に声を上げ、それから不安そうに風丸の顔をのぞく。
「あぁっ………な…?」
「そろそろ欲しいだろ?けど実は、オレ今日の練習でちょっと腰を痛めちゃったんだよ……欲しかったら不動が自分で乗ってくれないと」
白々しい笑顔で告げる風丸に、不動は眉根を寄せた。
「……お前、最後まで普通に練習してたよな……?」
「後から来るタイプの腰痛なんだよ!ほら、それよりもうここも限界みたいだし」
「あっ、んん」
ふいに中心に触れられ、油断していた不動はあられもなくよがってしまった。
「くそっ……覚えてろよ…」
四つん這いになり風丸のいきり立ったものをある程度しゃぶると、再び対面座位になってそれを自身の秘部にあてがった。
「無駄にデケェから入れ辛いんだよ、お前のは……」
「そんなこと言って、いつも擦られて嬉しがってるじゃないか」
風丸は両手で不動の腰を支えながら、鎖骨を舌でなぞっていく。
なかなか結合できずに焦れている不動とは正反対に楽しそうである。
「うるせ……んっ、く」
ようやく先端が挿入し不動は一息ついた。
が、自分が必死につながろうとしているにも関わらず飄々と首に跡をつけて遊んでいる風丸に腹が立ち始めた。
思い切り前に体重をかけ、不動は彼をベッドに押し付けた。
「遊んでるくらいなら、黙ってろ!」
そう息まいて、強引に腰を落とし一気に風丸のものをおさめた。
「あ、あぁっ……んんぅ」
痛みと快感が半々で不動を襲う。
「くっ……大丈夫か?そんないきなり…」
「ん……黙ってろって……」
最初の衝撃が去るのを待ち、不動は徐々に上下運動を開始した。
もう自分の気持ちいいところは十分に把握している。
重点的にそこに擦りつけるように動いた。
「……はあ、あっ…あん」
本能的に腰を揺らす不動に合わせ、余裕だったはずの風丸の表情も張りつめてきた。
頂点に近づいていくにつれて律動も早くなっていく。
唾液しか用いていないそこはひりひりするほどの熱を帯びていた。
「っあ…も……イ、く……っ!?」
臨界点にあった不動の根元を風丸が強く握った。
「オレはまだだから……ちょっと我慢しろよ」
「そんなっ……あ」
先ほどまで不動のなすがままになっていた風丸が、下から強く腰を打ち付けだした。
「ふあぁっ、んっ、かぜま……やあっあ」
自らの重みと風丸の突き上げる力で、より激しい快楽が不動の声を大いに荒げさせた。
「あっ……く」
達しかけたまま抑えられている不動より先に風丸が身震いし、不動の中に解放した。
そして虚脱感で風丸の手が緩められた途端、不動も風丸の腹や胸部に巻き散らすことになった。
「んうっ……う」
ぱたりと不動も風丸の上に折り重なり、息が整うまで二人とも黙ったままであった。



髪の毛から滴るしずくをタオルでふき取りながら、不動はぼそっと声に出した。
「ホワイトデーはなしだな」
「ええっ!?なんでだよ」
当然のように抗議した風丸を一睨みして不動が言い返す。
「さっきので、十分返しただろ!好き勝手やりやがって」
「好き勝手って……不動の方だろ?オレの上ですごく気持ちよさそうに腰振ってたぞ」
あっけらかんと風丸は言い放つ。
「て……てめえがやれって言ったんだろ……!」
立ち上がり物凄い形相で拳をふるふると握る不動に、風丸は満面の笑みを向けた。
「ホワイトデー、楽しみにしてるな」

END
2011/03/03 塚井あさはけ
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塚井にまたまたまたいただきました!ありがとうありがとう!
今回は私が書かなかったバレンタイン話!私からのお題は『指舐め』でした。
風丸が不動の指を舐めるか、不動が風丸の指を舐めるか…聞かれた時は本当に悩んだ。まさに究極の選択(笑

というか塚井の書く風丸は本当に攻色が強い。是非見習いたい!
今回特に好きなのが不動の「無駄にデケェから〜」のセリフ。笑
私がしつこく風丸のアレが大きいことについて話したから取り入れてくれたんだね!ありがとう!笑
あ!塚井にコメントもらうの忘れた
とにかくありがとう!
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