ある日、風丸が風邪をひいた。


「……おい。……大丈夫か?」
合宿中だったので、風丸は自室にいる。
病気なのであまり近寄るのは良くないが、一人にしておくのも心配なので、持ち回りで風丸の様子を見ることになった。
気は進まなかったが円堂や鬼道など周りから、”持ち回りなんだから”と強く言われた結果、渋々ながら風丸の看病に行くことにした。
だが、行ったのはいいが、何をしたらいいのか分からず、ベットの脇の椅子に腰かけて黙ったまま風丸を見つめるような状態になった。
風丸も、幽かに意識はあるようだが何かを言うわけでもなく(もしかしたら言えないのかもしれないが)ずっと沈黙したまま気まずい雰囲気が漂っていた。そして、しばらくしてから耐えきれなくなった不動は、とりあえず適当な言葉を風丸にかけてみたのだった。
「……おい、風丸」
「……聞こえているよ」
しばらくしてから返ってきた風丸からの言葉はずいぶんと弱弱しく、普段とはかけ離れていた。
「らしくねぇぜ、風丸」
返事が聞こえたことで幾分か安心したが、ずいぶん弱った姿に逆な不安も頭をもたげた。
(本当に大丈夫か?)
そんな不安もよそに、風丸は力なく笑った。
「なんだ……心配……しているのか……?」
「……ばっ……!」
顔が赤らむ。思わず怒鳴りそうになるが何とか抑えて風丸に気づかれないように静かに深呼吸をする。
下げていた視線を風丸に戻すと、風丸がまっすぐこちらを見ていて、耳まで顔が熱くなった気がした。
「……んなわけねぇだろ。……えーっと……あ、あれだ。他の奴らが、風丸はどうだとか、何とかしょっちゅう言うもんだから……」
風丸の顔を正面から見れなくなって、顔をそらしたまま繕うように言う。
本人は気付いていないようだが、慌てた様子言う不動を風丸は風邪で赤らんだ顔のまま、不思議そうに見ていた。そして、言葉が見つからないのか、言葉を止めて視線を宙にさまよわせる不動に、ふっと笑みをこぼした。
「……ああ、俺は、大丈夫だよ……。昨日よりだいぶ良くなったし……1,2日で練習に戻れる……さ」
笑いながら言ったが、小さく咳が漏れる。その振動で、額に乗っていた濡れタオルがずれた。
「とりあえず……これ、代えてくれないかな……?」

とりあえず、風邪で弱っている風丸本人からの指示に従って看病をしたが、そのうち疲れた風丸が眠り、次の担当の鬼道が風丸のお粥を持ってやってきたので、不動は自室に戻ってベットの上に飛び込んだ。
(あー……疲れた)
看病なんて慣れないことをしたからか。でも、ほとんど風丸の指示に従っただけだ。病人から指示をされて看病するとはおかしな話だったが、本当に何をやったらいいのかわからなかったから仕方ないだろうと心の中で言い訳をしておいた。
「はぁ……」
明かりはつけたままだったがベットの上でうとうとする。
ふと、風丸の笑顔が頭をよぎる。未だに顔が赤くなる。
ぐっと頭をベットに押し付け、無理やり目を閉じる。しばらくしたら、睡魔はすぐにやってきた。


「行くぞ!鬼道!!」
円堂が大声を上げながら指示を出す。
鬼道がボールを蹴りながら走る。
「不動!」
鬼道が不動に声をかけてボールをパスする。
「来いっ!」
ゴール前には立向居が構えている。
(…いける!)
ゴール目前まで迫り、シュートを放とうと力をためた時
(なんだ……心配……しているのか……?)
ゴッ………!
放たれたシュートは、立向居の頭上を越えて飛んで行った。
「くそっ……」
「どうした、不動。今のは決められただろ?」
鬼道が訝しげに不動に駆け寄ってきた。
(……今……)
風丸の顔がちらついた。しかも昨日の笑顔。どうしても頭から離れない。
「大丈夫か?」
円堂まで近寄ってきた。円堂は、不動の顔を見ると、少し心配そうな顔をした。
「なんだ。不動。なんか顔が赤いぞ?ちょっと休んできたらどうだ?」
「…え?」
不動は間の抜けた返事を返した後、円堂の言葉の意味を理解して、無意味に顔をこすったりしてしまった。
「そうだな。あっちのベンチで座ってろ。他の奴らは練習再開するぞ」
みんなが、動き出すと、一人取り残された不動は、仕方なくベンチに下がった。
(畜生……なんだっていうんだ)
不自然に速い鼓動を鎮めるようとするが、そのたびに一人の顔が頭にちらついて仕方がない。
しばらくして、マネージャーの一人が声をかけてきた。
「ねぇ、今手が空いてないから、風丸君の様子、見てきてくれない?」
「……俺が?」
しばらく考え込んだが、結局行くことにした。
(……奴のためじゃねぇ、マネージャーに頼まれたからだ!)
風丸の部屋に向かう間、イライラしながら何度も心の中でつぶやき続けた。そして、いざ風丸の部屋の前についたとき、そんな言い訳も吹き飛んだ。
(……風、丸)
ドキドキ……
心臓が高鳴る。
(いやいやいや……何考えているんだ俺)
そして、ノブを握るまで数秒。

「風丸、入るぞ」
最初の一瞬だけ、ためらったが後はいつも通りの感じでいられたと思う。
そして、風丸の姿を見た瞬間、息をのんだ。
「ああ、不動か」
前に見た時よりもだいぶ顔色のよくなった風丸が、笑顔で不動を見つめた。
先ほどより自重の忘れた心臓が、横隔膜を突き破ってきそうな勢いで鼓動を速めているのが分かる。頬のあたりに熱が集まり、自分は頭がおかしくなってしまったのではないかと思ってしまう。「どうしたんだ?なんかあったのか?」
不思議そうに首をかしげる風丸から慌てて視線をそらしながら近づく。
「ま、マネージャーに頼まれたんだよ。様子を見るように…って」
とりあえずベットの横に置かれたままの椅子に腰かけて、不自然ではない程度に風丸に向き合わないようにする。
(……ったく、何してんだ俺!)
だんだんドギマギする自分に対し怒りが募ってくる。自分に対する怒りで、少しは変な感情も紛れる。そうして、自分の感情をごまかそうとした。
「ああ、悪いな。練習中だっただろうに」
「……ふん」
練習中に風丸の顔が頭から離れなくて休むように言われたのは黙っておく。
第一、何故風丸の顔が何度も頭の中で再生されるのかと問われれば、自分でも何と答えればいいのかわからないからだ。
……それに。
「どうしたんだ?不動」
むすっとした顔をした不動を訝しげに風丸が覗き込む。
はっと我に返った不動は、至近距離でのぞきこんでくる風丸にぎょっとして大きくのけぞった。
「うわっ……」
「おっ、おい、不動!」
危うく椅子ごと後ろにひっくり返りそうになる不動に、慌てて風丸が手を伸ばす。
余ほど慌てていたのか、今度は力が強すぎて不動は前に倒れこんでしまう結果となった。ただ、運よくベットが目の前にあったため床には激突せずに済んだが、風丸に覆いかぶさるような形になってしまった。
「痛ぅっ……」
痛みに顔をしかめながら、何とか体を持ち上げると目の前には風丸の白い胸があった。
「……っ!」
思わず起き上がって離れようとしたが、その前に風丸の腕が不動の背中に回り、頭をなでた。
「はぁ……良かった。びっくりしたぞ」
風丸は大きく息をつき、言った。だが、不動の方は風丸の予想外の行動に頭が付いていけず、ついに固まってしまった。
(えっ?えっ?……なんなんだ!この展開っ!)
状況を理解しようとすればするほど頭が混乱する。そして、心臓の音はうるさいくらい。
「お、おい!放せ!何やってんだよ!」
「え……あ」
不動が必死に言うと、風丸が我に返ったようにはっとした表情になり、不動を拘束する腕の力が緩んだ。その隙に不動は風丸から離れる。
「わ、悪かったよ……」
風丸が動揺したように謝ったが、不動はそれだけでは足らないので風丸を人睨みしてやろうと思ったが、風丸を見た瞬間、風丸の顔色に気がついた。
「……え、あれ?」
風丸は不動を見ていなかった。ちょっと俯いたまま、僅かに見える顔は赤く色づいており、口元は歪んでいる。自分でもどうしてそんな事をしたのかわからないのか、動揺しているのが分かった。
(……なんだ)
風丸の動揺した姿をみると、却って冷静になれた。案外、人が焦っているのをみると自分はその分冷静になれるようだ。
「いや、でも本当によかった。怪我とかなくて……」
風丸は、時間をおいてだんだん落ち着いてきたようだ。顔は多少赤みを残しているものの、何とか顔を上げてちゃんと不動を見つめていた。
(こっちはお前のせいでもっと動揺してたんだ。お前ももっと動揺しねぇと不公平だろ……)
意外とすんなり平静を取り戻した姿を見て、理不尽なことを思い始める不動。そして、一つ思いついた。
(今に見てろ……)
「あぁ……本当に助かったぜぇ。たっぷり礼をさせてくれよ」
不敵な笑みを浮かべながら、風丸の胸の上に指を這わせる。
「え……な、どうしたんだ、不動……」
予想通り、風丸の声に動揺が入る。
「だから、礼、だよ」
言いつつ、不動は手を止めない。すばやく風丸のボタン式のパジャマに手をかけ一気に前をはだけさせる。
「な……っ!」
風丸としては完全に予想外の展開に、対処ができないようだ。完全に不動のなすままされるままになっている。
不動は、風丸の様子を見て楽しくて仕方がない。はだけさせた寝巻の内側、素肌の胸に手を触れ、ゆっくりと撫で回すと、だんだんと胸の突起へと手を這わせる。
「……!」
感覚が敏感になっているのか、胸の突起に不動の指が触れた瞬間風丸の体がびくりと反応した。
(くっくっくっ……)
風丸のあまりの反応に面白くて不動は、思わず笑ってしまった。
(…なんならもうちょっと)
あまりに面白くて、不動の行動はエスカレートしていく。
胸を一通りいじくった後、手を今度は下へと動かしていく。
意図に気付いたのか、風丸がにわかに動き出し、不動の手を止めようとする。その前に、不動は風丸の両手を片手で抑えて、ズボンの中に手を突っ込んだ。そして、風丸のものを無造作に掴むと、一気にしごきあげる。
「…ぅ……ふ不動……!」
風丸の声に熱がはらむ。風丸の顔はこれでもかというぐらいに真っ赤に染まり、湯気が出んばかりだ。そして、それと連動するように、不動の手の内にある風丸のものも、熱をはらみ芯を持ち始めている。
(へぇ…普段澄まし顔のこいつでもこんなんになんだな……)
不動はその程度の感想を持ちながら、緩急をつけつつしごき続ける。
風丸の声が浅くなり、そろそろ限界が近いことが分かる。
(あ、ズボンはいたまんまだ)
このまま達してしまえば、下着もろともズボンが汚れるのは目に見えている。この状態だと、みんなの洗濯物を預かるマネージャーなどに訝しがられることは必定である。とりあえず、風丸の抵抗が無くなっていることを確認してから、風丸を抑えていた手を外して、一気にズボンを引き下ろす。ちょっとして、風丸が完全に達した。
「あっ……!」
手の中に白いものが飛び散った。不動は風丸のものから手を離し、匂いをかいでみると顔をしかめて近くにあったティッシュに手を伸ばした。
「ふぅ……」
ようやく満足した。散々風丸の醜態を見て溜飲が下がる思いだ。……まあ、もっとも不動のただの逆恨みなだけなのだが。
「おい。風丸……」
と、風丸の方を見たら、かなりあられのない姿で、自分でやったことながら真っ赤になってちょっと鼻血が出た。
「あ…あ〜…」
楽しさが前面に出ていて、気付かなかったが、今更ながらとんでもないことをしたことに気付いた。そして、自分から楽しんでやっていたことには違いないから、謝るのもおかしいので、とっさに言葉が出てこない。
「……」
「か風丸……?」
というか、風丸の反応がない。前髪が完全に顔にかかっていて表情が見えない。
さすがに心配になって手を伸ばした。すると。
「ぅわっ……!」
待ち受けていたかのように、するりと腕を掴まれ風丸の上に倒れこんだ。
予想以上に強い力だったので、不動は嫌な予感を覚えながら風丸の顔を仰ぎ見た。すると、前髪の間から見える風丸の顔に戦慄した。
……心なしか、まとう空気がやばいものになっている。
「え…ま、マジか……」
不動の顔は、さっきの風丸とは対照的にさーっと青くなっていく。
「不動……こんなこと、するくらいだから、覚悟……いいよな?」
顔を傾かせ、さらけ出された表情は満面の笑みだ。
「ちょ……ま、待ち……いやぁ……悪かったって」
「何の話だ?」
この一言で、完全に不動は風丸を止められないことを悟った。



二人の服は完全に脱がされ、床に無造作に置き捨てられている。
ベットのシーツは乱れ、二人分の荒い息が交差する。
不動は完全に風丸の下に押し倒され、風丸の肉棒に貫かれている。
「あっ……あっ…ぅ……か……かぜ……」
涙と唾液にまみれた顔で風丸を見上げようとすると、風丸のが奥まで来る。
「うぁ……っ!」
思わず喘ぎ声を上げれば、風丸は口元をゆがめて暗い笑みを見せる。
「どうしたんだ?不動。そんなに良かったのか?」
「いっ……い……いい……わけっ………うわっ!」
不動が言い終える前にもう一度風丸は不動を突き上げる。
不動の体が弓なりにしなり体を伝う汗が飛び散る。そして…
「そろそろ……イく」
囁くように風丸は不動に言った。そして、その言葉の中に不動は不穏なものを感じた。
「お、おい……風丸……まさか……」
「一緒にイこうぜ」
そういうと、風丸は不動のものを掴むと、性急に扱き始めた。
「い、いや……か、風丸ぅ!!」
既に勃っていた不動のものは、風丸の手で一気に絶頂までのぼりつめていく。
「あぁ……ああああああああああああああああああああっ!!!」
不動がついに達し、叫び声を上げる。同時に、不動に締めあげられた風丸も一気に達し、不動の中に白濁をぶちまけた。


「……んぁ」
事が終わり、倦怠感が体中を覆い尽くす。
ヤった後、気を失ってしまったのか、日の光がずいぶんと変わった。
不動は、ぼうっとした頭の片隅で、何か忘れているような気分に駆られていた。
(えーと……なんだったっけ?)
なんか大事なことを忘れているような……そう、とっても大事な。
「練習!!!!!!!!」
そうだ。練習に、ちょっと休めと言われて休んでいたが、マネージャーの一人に言われて風丸の様子を見に来ただけなのだ。ということは、そのうちマネージャーが来るということではないのか。…それに、不本意ながら練習を休むことになったのだ。――すぐ戻るつもりだったのに。
「い、今どうなっているんだ……」
慌てて立ちあがってから、今の自分が全裸だということに気がついた。
「〜〜〜〜〜〜っ!」
慌てて前を隠すが、意味がない。それよりも、部屋の主のことを思い出した。
「あ、あれ……風丸?」
自業自得ではあるが、風丸にさんざんやられた身の上で風丸とまともに顔を合わせるのは腰が引けたが、自分は気を失っていたのでもしかしたら気を失っている間にマネージャーが来ていたらと思うと気が気でない。それに、何故だか見当たらないと不安感が募る。
「風丸、いねぇのか?」
そして、何気なく一歩足を踏み出すと。
「………!」
ぞぞぞっとした足の間から走り、恐る恐る見て見ると、内腿に白い液が一筋流れている。その液がどこから流れてきているのは一目瞭然で。
「か、風丸っ!」
とりあえず、これをどう処理したものか。
今の格好のままじゃ部屋から出れないし、部屋を出ないと風呂にも入れない。かといって、部屋にずっといれば他の仲間が訝しんで探すだろう。そしてすぐにマネージャーから風丸の部屋に行ったことが分かるだろう。最終的にこの部屋まで来られて、今の姿を全員に見られることになる。それはまずい。すごくまずい。プライドとしても人間としても。
結局のところ、この秘密を共有する風丸に頼ることしか思いつかない。
「風丸っ風丸!どこにいんだよ!?」
「呼んだ?」
焦りで取り乱しかけたところで後ろから風丸が首に抱きつくように現れた。
まさかの出方だったので、不動は分かりやすくびくっとした。そして、抱きついてきたのが誰かなのか分かると力を抜いた。
「どこにいたんだよ?す……すぐに出てこいよ」
鼓動がまだ早鐘を打っているが、いつも通りの様子を無理やり作って言葉を紡ぎ風丸を振り返ると、風丸はうれしそうに笑っていた。
「はは。ごめん。すぐそこにいたんだけど、お前、俺に気付かずに慌て始めるからさ」
風丸の言葉に、不動は凍りついた。思わず「……は?」と声を漏らしてしまう。
「……かわい」
風丸が不動の頬へキスをすると、不動は色々な羞恥心でみるみる顔を赤く染めていった。
「ななななななっ………」
あからさまに動揺して、どうしたらいいのかわからない。そのうちに、風丸は先ほどの嬉しそうな顔とは打って変わってもう耐えきれないという表情で、くっくっくっと笑い始めた。
「これで、おあいこだな」
「……へ?」
自分でも間抜けな声を出してしまったと思う。でも、風丸は気にしてない様子で目尻にわずかに浮かんだ涙を拭きとると、普段の表情に戻った。
「じゃ、後処理は任せてくれ」
風丸は言うと不動に上着を羽織らせた。そんなこんなで不動が風丸に”捕まる”までそんなに時間はかからなかった。


END

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黒葉月様からいただきましたー!ありがとうありがとう!
本当にこんな真面目な風不を書いてくれるなんて…ハアハア!というかこのサイトで一番長い文章じゃないか!?ありがとう!

コメントいただきました→
イナイレ、もといキャラを知らない人が中途半端な作品を出してごめんなさい

全然大丈夫!興奮ものだよ!
そういえば黒葉月はイナイレを3話までしか見てないんだったね笑。
あとぽつぽつ一緒に見て、毎日毎日風不の話を聞かせてしまったね…どうだい風不いいだろう!
また書いてね!わくわく!

2010/08/18 黒葉月ヒロ
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