不動はいつも一人はずれた席で食事している。
今日もオレと不動の間にはテーブルひとつ分の距離があった。人を見下した態度をとっている彼をオレたちの方から遠ざけ、それを理解した上で自分でも孤独を選んでいるんだろう。
あの円堂でさえ扱いに困っているのだから、相当なものだ。


「あっちぃ!」
オレの隣で円堂が急に大きな声を出した。
涙目で、手をつけようとしていたスープを見ている。
水をがばがば飲み、オレに言う。
「風丸、お前も気をつけろよ。これスッゲー熱いぞ」
「急いで飯をかっこもうとするからだろ」
苦笑交じりで答えたとき、かすかな金属音がした。
見渡すと、少し離れた場所の不動が眉をひそめながら、スプーンを拾おうとしている。
それから先ほどの円堂と同じように水を大量に飲み、舌を突き出す。
(あ……)
熱かったんだな、と思った。
他の誰も、今の不動の失敗には気づいていないようだ。
わざわざ言うことでもないと思い、一人でくすりと笑った。

新しい必殺技はなかなかモノにできない。
ヒントは得たものの技術がおいつかず、オレは苛立っていた。
このままではダークエンペラーズのときと同じだと自分で自分を鼓舞するが、悔しい気持ちはおさまらない。
今も円堂と鬼道に相談してきたところだ。
円堂は焦るなと言う。努力は必ず報われるものだと。
しかし次の試合はすぐそこだ。FFIはもうとっくに始まっている。
「時間が、ないんだ……」
自分の部屋に向かって歩いていると、ふと少し開かれた扉が視界に入った。
暗闇の中で何かが動いた気がして立ち止まり、オレはそっと中をのぞいてみた。
(ここは……不動の部屋?)
注意して見ると、耳にも届くものがあった。
「…んっ、はぁ」
薄暗い中で確認できるのは、小刻みに右手を動かす不動だった。
色彩のないその光景に、食堂で見た舌の赤さだけがオレの頭の中で鮮やかに重なった。
オレが引き戸を勢いよく開けると大げさな音がなり、不動が照らされた。
彼は一回大きく痙攣して顔を上げた。
「な…ッ!?」
今まで見たことがないくらいに目を見開いてオレに視線を合わせる。
その顔は紅潮し、心なしか汗ばんでいた。
オレは一歩進み後ろ手で戸を閉めた。どんな表情をしているか、自分ではよくわからない。
光がまた閉ざされ、不動の様子もおぼろげにしかわからなくなってしまった。驚きのあまり言葉を出せずにいるらしい。
オレも無言のまま不動に歩み寄り、その右手をとった。自身の先走りで軽く湿っている。
「な、なんだよォ!?勝手に入ってきて、一体なんの…ぅあっ」
オレにいきりたった自身を撫でられて、不動は身体を反らせた。
「抜いてる途中だったんだろう?手伝おうか」
「はァ?バカかテメェッ」
言葉とは裏腹に、オレが触るたびに不動の身体はびくんびくんと反応した。
「あ、やめ、…あっんん」
不動の両手は、仰向けに倒れそうな身体を支えるように強く張り詰めてシーツを握り締めている。オレの手を振りほどいた右手も。
白いシャツごしに、胸のあたりのふたつの突起が目立ってきた。オレはその突起を口に含め軽く吸ってみた。
「ひっ、んう…そこ、やッ」
身体をよじって抗議らしきものを口に出すが、先ほどより怒張した自身に気づいているようだ。
下唇を強く噛んで、かたく目をつむっている。
「も…出るぅッ……」
小さな小さな声で発された言葉通り、不動は控えめに自身を解放した。
オレは不動の胸元から口を離し、ベッドに仰向けになって息を上げている不動に向かって言い放つ。
「じゃあ、次はオレの番だな」
不動の首の上あたりにまたがり、己のものを取り出す。すでに十分な硬度をもったそれを見た不動が暴れだした。
「てめ、それ、どうする気だよ!?」
オレを無理やり押しのけようともがく不動にオレは無性に腹を立てた。理由はわからないが。
「うるさいな!お前のだって抜いてやっただろ。試合にも出してもらえない役立たずなんだから、これくらいしろよ」
不動の表情が歪んだ。きっと、オレの言葉に傷ついたんだろう。
(つらいのは、お前だけじゃないんだよ)
不動が抵抗の手をゆるめた隙に口をこじあけ、挿入した。
予想していなかった、ざらりとした感覚がオレの背筋を震わせた。
「くっ……歯を立てるなよ」
瞳に涙をためて、不動は息を詰まらせている。構わず動くオレに必死に蔑んだ目を向けているのがわかった。
じゅぽ、じゅぽ、と粘着質な音がオレの耳朶を叩き、あの赤い舌が自分のものに絡みついているイメージが浮かぶ。
そろそろ達しようとしているのがわかり、素早く己を不動の口から引き抜いた。
不動は二回ほど咳き込んでから、口角を卑屈に吊り上げ、言った。
「もう終わりかよ。オレの中、そんなによかった?」
「…黙ってろ」
「さっき舌ヤケドしたからな。ザラザラしてよかっただろォ?」
プツン、とオレの中で何かが切れる音がした。
不動の肩を強く掴んで力ずくでうつぶせにさせた。ふき取らないままの手でずっと押さえつけたせいで不動のジャージは精液で汚れきっている。
そのままの勢いでジャージと下着をおろし、小ぶりな尻を露出させた。
「ひッ…?な、何」
青ざめた不動が身じろぎを始める前に、無防備な秘所に中指を差し込んだ。
「ぅああっ!?や、やめろっ…」
一本目は特に抵抗なく受け入れた不動のそこに、二本目を挿入する。
「ぁん、いっ…てェ!やめろって…んだろ」
だんだん不動の息が荒くなっている。自分の指がきつく締め付けられるほど、不動の苦しさが伝わってくるみたいだった。
不動が出した残滓だけでは摩擦を軽減するのに足りず、中をかき回すたびにひりひりするほど熱い。
「ぁううッ!」
早々に追加した三本目に、不動がまた荒い声を上げる。恍惚などみじんも感じさせないその声音にオレは興奮した。
「そろそろ、いいだろ…」
「…くぅ、んんっ…ハァッ、てめ、覚えてろよ……っ」
恨みがましくオレをにらみつけたその目がやけに扇情的に見えて、オレは焦りながら自身を不動にあてがった。
指とは違う感触に、また不動の身体がびくんと跳ねた。握った拳が細かく震えていた。
「う、あ、ああぁぁぁっ、ひぁんッ」
不動の中は熱くて窮屈で、ひくひくと動きオレを締め付けた。その刺激に耐えられず腰が動くのを止められない。
「やぁぁッ…ッひン、んあぁ」
オレの動きに合わせて不動が苦しそうに喘ぐ。耳に届くその微細な振動がオレを更に揺さぶらせた。
ただ不動の腰と足をつかみ、夢中になって不動の中を荒らすだけだった。不動が感じるわけがないと思った。
だがオレが果てる瞬間だけ、わずかに不動が甘い吐息を漏らした。そんな気がした。


今日の朝食は純和風。味噌汁と白飯が食欲をそそるような湯気を立てている。
「おはよう、風丸」
同じメニューをお盆にのせた鬼道がオレの隣に腰を下ろした。
「新必殺技、何かつかめたか?」
「いや。まあじっくり取り組むよ。円堂の言うとおり、焦ったってしょうがないからな」
さりげなく視線を斜め向こうに向けると昨夜あんなに間近で見た白い肌が、テーブルひとつ分の距離に見えた。
味噌汁の茶碗を持ち、ふうふうと息を吹きかけている。
ふと、視線が合った。
少々面食らったオレと、視線をはずし決まりが悪そうな顔をする不動。
他に誰も、気づいている奴はいなかった。



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塚井に書いてもらいました〜!
うわーうわー!嬉しいな!!!!ハァハァ
つかホントに書いてくれるとは思わなかったよ!
「とりあえず喘ぐ不動」というアホなリクエストに、しかもその日のうちに答えてくれた君は天使だよ!いつもは変態だけど今週いっぱいは天使!

塚井よりコメントもらいました!→
味噌汁を飲む鬼道にハアハアしながら書きました。本来の風丸はもっとやさしくていい男です。

えー鬼道に!?不動は!?
まあとにかくありがとう!


2010/04/12 塚井あさはけ
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