実証
風丸なんて正直眼中になかった。
キスがしたいなんてボケたこと言って俺をからかうもんだから、少し脅かしてやろうとした。そしたら結構強い力で肩を掴まれて、一瞬、怖くなった。こんな女顔なやつに、雄の部分を感じた。だから予定より早く蹴っ飛ばしてやった。
なのに、
「不動、俺やっぱりお前のこと好きだった」
それから風丸につきまとわれるはめになった。つきまとわれると言っても、気づくと隣にいたりとか、その程度なのだが。まぁこいつも俺を好きになったことに戸惑ってるのかもしれない。無理に話しかけたりしてこないだけマシだ。と、鬼道につきまとう佐久間を見て思った。
「二人一組になって腹筋、背筋50回!」
「鬼道」
「あぁ」
当然のようにペアになる鬼道と佐久間。
視線を感じて、ふと横を向いた。風丸と目が合う。何か言いたそうだ。
すぐ視線を外す。もう腹筋を始める鬼道。脚を抑える佐久間。
「不動」
俺の横には風丸。
「一緒に…」
「あぁ」
誰かと組む予定もないし、風丸とは体格も似ているから。余ったらマネージャーと組まされるし。
「このペア、最近よく見るな」
背筋をしていると、声が降ってきた。鬼道の声だ。佐久間のシューズも見える。
「風丸は優しいからな」
と、佐久間が嫌味たらしく言う。皆の嫌がる役を買って出てるとでも思っているらしい。
「46、いや…不動とは体格が似てるからやりやすいんだ…47」
風丸が俺の上で言う。ちげーだろ。
「気をつけろよ、こいつ、なに企んでるかわからないからな」
また佐久間が言う。本気なのか冗談なのか。
50。
つかなんでわざわざ外で筋トレなんだ。立ちあがってジャージについてた砂を払う。
「なにか企んでるのはこいつのほうだぜ」
「え」
風丸が固まって、佐久間は不思議そーな顔で俺を見る。鬼道は…
「そーだろ、風丸くん?」
「そうなのか、風丸」
鬼道には感ずかれたかも。
「え」
「次、二人一組になってパス練習!」
「鬼道」
「あぁ」
当然のようにペアになる鬼道と佐久間。
「…不動」
「あー」
俺の隣には風丸。
END
2010/08/03