大好きな不動と毎晩のように抱き合う。不動は俺の下で、俺にすがって、鳴いて、


それらはどうしようもなく、俺を満たして、傷つけた。










SIN 2






普段であれば何かしら『出ていけ』というような合図があるのだが、今夜は行為が終わり後処理が済んでもとくに何も言われなかったので、しばらく不動の部屋に居すわることにした。エアコンの冷風が汗ばんだ肌に直接当たって、少し寒い。
不動はというと裸のまま手足を縮めて毛布にくるまっていた。捨て猫みたいだと思った。

「エアコン切る?」
「いい」
「寒いだろ?」
「いい」

俺はベッドの下にあったTシャツだけを着て、不動の隣に寝転がった。
「…寒い」
呟くと、不動は自分がくるまっていた毛布を半分俺に譲ってくれた。
毛布の中に入ると中は不動の体温で暖まっていた。体を寄せると足と足がぶつかる。シーツは所々濡れていて、正直気持ち悪い。
俺が不動の背中に腕を回すと、不動が少し掠れた声で言った。

「恋人同士みてぇだな」
「…そうか?」

不動は唇だけで笑った。


もし、お前と恋人同士だったら、こんな風に抱きしめたりはしないよ。
今はたまらなくお前が愛しいから、まず、その瞑ったままの瞼にキスをしたい。お前が大人しくしてくれるなら、その頬を撫でて、唇にキスをしてから、二人で手をつないで眠るんだ。

バカな妄想にふけって、俺の傷口はひろがるばかりだった。




「風丸」
「ん」
「告白しねぇの?」
「…誰に」
「えんどー」

不動は唇だけ動かしながら言う。
不動は自分を円堂の代わりだと思っているらしい。否定をするのも肯定をするのも、危険なことのように思えた。

「お前は?」
「……」

不動は黙りこくってしまった。
元々、俺達の関係などこんなものだ。体の距離が縮まっただけで、俺は不動のことを何一つ知らない。
なのに時々、錯覚してしまう。

「…ちなみに俺が好きなのは円堂じゃない」
「え、そーなの」
「円堂が好きなんて、俺は一言も言ってないだろ」
「そだっけ…じゃあ豪炎寺?…まさか鬼道ちゃんとか」
「ハズレ」
「ん…俺の知らない奴?」
「…そんなこと、どうだっていいだろ?」
「まぁな」

「んでも気になんじゃん。自分が誰の代わりにされてるか」

すごく悲しいセリフだと思った。しかしそのセリフを言わせているのは間違いなくこの俺なのだ。

「…そうだな」



不動は目をつむって再びおやすみモードに入る。

不動は俺の隣で眠れるのだろうか。俺が隣でいいのか。




「不動」
「眠い」
「すまん…俺、戻ったほうがいいか?」
「……散々ヤっといて放置すんのかよ」
「……」
「おやすみ」
「…あぁ、おやすみ」


不動と過ごせば、その分だけ傷はひろがって、
不動を想えば、その分だけ傷は深くなっていく。

正直もう、取り返しつかないくらいに傷は大きくて。
でもどんなに痛くても不動を手放すことが俺には出来なかった。



もうこの傷で死んだって構わない。




2010/09/12

続き書いてますが気長〜にまっててください。
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