今日の天気、たぶんきっと晴れ。俺は外に出れないから知らないけど、たぶん晴れ。晴れったら晴れ。
さて、冒頭から天気の話題にこだわってみたけど特に何の意味もない。俺は別に外が晴れていようが雨だろうが雪だろうが(この気温で雪はないだろうけど)屋敷から出られないから特に関係ないし。
いやいや。そんな話は置いといて、だ。先日からエンヤおばあちゃんが行方不明だ。思えば屋敷に出入りする人もだいぶ少なくなったように思う。一体誰と戦っているんだ?エンヤお婆ちゃんに限らず屋敷に出入りするほどの父さんの部下は大概がスタンド持ちだと聞いているけどそのスタンド使いをことごとく再起不能…あるいは、あんまり深く考えたくないけど殺している…ってことは、相手もスタンド使いだってことだろう。ん?…そういえばDIO様は三部のラスボスだっけ?…じゃあ相手は…え〜っと…あれだ。じょうたろう、とか言う人なんだろうか。いや〜、ちらっと見たことあるよ?ジョジョの中では人気だったらしいし(友人曰く)かっこいいらしいし(友人曰く)なんか後の部でも登場するらしいし(友人曰く)。…あ、うん。全部友人情報でごめん。俺読んだことないから…許して…。確か格好は鎖の付いた長ランに帽子だった…ような…ん?リーゼントだっけ?ん〜?
まぁいいや。俺は思考を放棄した。なんてったって覚えてないし知らないもんは知らない。うんうん、仕方がない仕方がない。
でも会いたくないな、とは思うね。だってその人は俺の父さんを殺しに来るわけでしょ?いやよく知らないけど…少年漫画の王道では野原で全力で殴り合って「なかなかやるじゃないか…」「お前もな…」的な友情が芽生えるなんてこともあるかもしれないけど。あっ…でも友達が「JOJOって登場人物が何の感慨もなくあっさり死んでくからビビる時がある」って言ってた気が…当時はへ〜そうなのか〜〜くらいしんか思ってなかったけど…俺も案外さっくり死んじゃうのかもしれん。まぁ太陽の下に出たらぽっくり逝ってしまう訳ですけど。
「今日はお引越しをしましょう」
だからテレンスがそんな事を言い出した時、俺はひそかに"さては死亡フラグ"と思った。
だってさ、お引越しってことはさ、外に出るってことじゃん?お外に出るってことは太陽の光にあたるかもってことじゃん!!いこーる!死!!デッドオアデッド!!あっ!でも今までも何度もお外出てたけど大丈夫だったよね…ひっひっふーー。よしよし、落ち着け俺。ここの外に出るのは初めてだけど(ジョセフ兄ちゃん達と出会ってた期間の事はノーカンとして)落ち着いて行動すればたぶんきっと大丈夫だ。
「なんでお引越しするの?」
そうだ。まず問題はそれだろう。
わざわざ使いなれた屋敷を棄てて(棄てると言う表現は間違っているような気がしないでもないが)新しい屋敷に居を構える。それに一体何の意味があるのだろう?働く場所が変わった訳でもなければ(たぶん父さん無職だ)この屋敷に不満がある訳でもないだろうし。俺が一人首をかしげていると
「念のためですよ」
とテレンスはいう。念のためってなんだ。
ん〜と、なにか危機が迫っていて…まぁ父さんなら大丈夫だろうけどもし万が一何かあったら困るからって話?父さんに危機とか…あ、件のじょーたろうくん?じょうたろうくんって一人で乗り込んでくるのかな…それは流石にありえないか…ていうかじょうたろうくんいくつ?
「貴方も薄々勘付いている筈です…。あの忌々しい血統が近づいてくるのを」
…ん?血統の前単語よく聞き取れなかったんだけどなに?近づいてくるっていうのもなんだろう。あまりよくわからない。俺は首を傾げた。
ひょっとすると…数日前から感じている違和感の事を言っているのだろうか。てっきり俺の勘違いだと思っていたのだけれど、数日前から首にある星のあざが変な感じなのだ。皮膚病の一種なんじゃなかろうかと戦々恐々していたのだが―――どうやらこれが「血統」とやら近づいている証らしい。なんという厨二。いつの間に俺もそんな右目に封ぜられし闇の力みたいなものを身につけてしまったんだ!「首筋の星の痣がうずくぜ…」とかなんかカッコ悪からもっとカッコいい感じにしたい。あれっ!俺ノリノリだな!
それにしても…アレだ。
「血統?」
って、なに?
うん、これに終始する。血統ってなんだ。なんの血統?血統書の事?犬か猫?父さんはどっちも嫌いそうだ。しいていうなら猫の方がまだましじゃあないだろうか。
「ええ、そうです」
テレンスはいかにも、と言った感じで口を開く。俺は今さら「お前その顔どうしたの」と今までも散々思っていた事を口にする訳でもなくじっと彼の顔を見ていた。みればみるほど…うん。それがはたして化粧なのか、あるいは車にひかれたのか。いろいろと心配だ。
「あのジョースターの血統ですとも」
じょーすたー。
じょーすたー、聞いたことあるな。じょ…じょ…えっ。
えっ。えっえっ?うえっえええええええええええええええええええええええ!
「ジョースター!」
じょ、じょじょじょジョースターって言ったら!ジョセフ兄ちゃん家じゃないですか!やだー!!なんでジョースター?!だってお父さん殺しに来るのはじょうたろうくんじゃん!ジョースター関係ないじゃん!!どうしてそうなった!!!
えっ…えっ?でも、あのさ。ということは…ひょっとして、ジョセフ兄ちゃんも来たりするんだろうか。考えてみればジョセフ兄ちゃんって父さんに殺されたジョナサンさんのお孫さんな訳だし…父さんが生きているって知ったら…。…ジョセフ兄ちゃんが今一体何歳なのか俺は知らないけれど、無理を推してでも来るかもしれない。それほどまでに根深い確執があるかは俺は知らないけれど…でも…うあああああああああ。もうやだなにもかんがえたくない。
「ええ、ですから。DIO様が負けるようなことは万が一、億が一にもないでしょうが…相手が相手だけに万全を期すのはそう悪いことではないと…」
俺はまだ頭の整理が付かない。もう全部放り出したい気持ちでいっぱいだ。なんでそんなこというの!やだ!!もう寝たい!!寝てすべてを忘れたい!!
ジョセフ兄ちゃんがやってくるかもしれない、ということは嬉しい。だってジョセフ兄ちゃんにまた会えるかもしれないから。でもそれは父さんを殺すためにここにやってくるってことで。…テレンスも、ここにいるひと皆殺すかもしれないってことで。それは俺だって殺されるかもしれないってことで、でもジョセフ兄ちゃんには会いたくて。…でも父さんやテレンスやヴァニラが死んでしまったら俺はきっと悲しい。かといってジョセフ兄ちゃんが負けて殺されるなんて嫌だ。
俺にどっちがいい、なんて選ぶ権利はないだろう。生きるも死ぬも、勝つも負けるも、俺の選択の範囲外にある。
…ああ、やだな。なんかじめじめしてきちゃった。ただでさえ暗くて陰鬱な屋敷なんだから、せめて気分だけは明るくいきたいもんだ。あ〜〜〜あ。それもこれも父さんがなんかしでかしちゃうのが悪いんだよ。なにしてんだよ!引くわ!!俺スピードワゴンさんから事の顛末聞いて引いたからね!!次生まれてくるときはその病直しときなよ!!!
なんて事をうだうだ考えながら、仕方なし、俺はテレンスに言われたとおり自分の荷物をまとめることにした。ていうか俺荷物少ないからね?もうぬいぐるみたち位じゃないですかね!移動は夜間だそうです!!そりゃそうだね!!
bkm