サッカー日和だねって笑った

**月**日
今日病院から退院した。茂人君はまだ入院してるって言ってた。何の病気なんだろう。
風介とサッカーした。楽しかった!







入院していたらしい赤毛の弟が帰ってきた。

僕は正直あの双子のことなんてどうでもよかったけれど、何かと腐れ縁な晴矢が時々思い出したようにあの赤毛の兄を罵っていたから何となく印象にはあった。まぁかといって、それ以上でもそれ以下でもない。
改めて弟を見る。兄の方は活発な印象を受けるが弟の方はそうでもなく、むしろ大人しい印象を受けた。少しばかりやつれているのは病院帰りなのだから仕方がないだろう。

「……………」

そいつは庭でサッカーボールを持ったままぼんやりと空を見上げていた。僕も空を見上げてみたけれど、なんてことはない。いつもの綺麗な青空だ。遠くの方で鳥が飛んでいるのが見えた。

視線を弟に戻す。そいつは相変わらずぼんやりと空を見上げていたが、手に持ったサッカーボールだけは手放さなかった。

「なぁ」

話しかけたことに他意はない。なんとなく、気になったからだ。

「サッカー、するのか」

われながら愛想もくそもない話しかけ方だが、そいつは気にした様子もない。ただ弾かれたように振り返って、僕の姿を見つけると気が抜けたような表情になった。

「……うん」

そいつからはか細い返事が返ってきた。ボールを持つ手に力が入っているのが分かる。
へにゃり、と笑顔を向けられた。

「好きなんだ。…君は?」

「君じゃない。涼野風介だ」

「風介君」

「君はなくていい」

「じゃあ風介」

「なんだ」

「風介はサッカー好き?」

そいつは相変わらず気の抜けた笑顔で話しかけてくる。へにゃへにゃ。効果音にするならこんな感じだろうか。

「好きだよ」

「そっか」

「君はサッカー好きなのに、誰かと一緒にやらないのか。一人で出来ることなんて限られているだろう」

そいつの周りに人影はない。いるのは僕とそいつだけだった。
広い庭でポツリと、サッカーボールを持って立っている。こいつの真意が理解できなかった。

「ちょっとまえまでは…お兄ちゃんとしてたんだけど」

そいつは言いながら視線をそらした。ふらふらと明後日の方向を見やっては何かを探しているかのようだ。

「…お兄ちゃん、別に友達が出来たみたいだから。僕が相手にならなくってもいいみたい。もっと新しいサッカーボールもあるみたいだし」

確かに、そいつの持っているサッカーボールは使いこまれていて古臭い。おひさま園で使われているサッカーボールもそれなりに古いが、最近新しいボールが入ったからそればかり使っていた。

「………じゃあ僕が相手になるよ。良いだろう?」

そいつは心底驚いたような顔をして見せて、恐る恐る「いいの?」と尋ねてきた。
馬鹿だな。よくなかったらわざわざ僕からそんなこと提案したりはしないのに。

「当たり前だろう」

そいつの表情がみるみる明るくなった。こいつは本当はこういう風に笑う奴なのだろうか。今までの笑みとは違う笑顔をこちらに向けてきた。

「あ、ありがとう!すっごくうれしい!!すっごく!!」

「また大げさだな」

「だって、だって…嬉しいもん!」

えへへ、と笑いかけてくる。

「誰かとサッカーするの、久しぶりだなぁ」

ポツリとつぶやかれた言葉に、あぁ、晴矢の馬鹿はこれに怒っていたのか、とおぼろげながらに理解した。



























風介さんの素は「僕」だと萌える。幼いころはもうちょっと口調も緩いイメージ

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