と、思ったんだけどな…

**月**日
リュウジが庭の隅っこで泣いてた。
どうしたんだろう、何かあったのかな。
皆最近ピリピリしてるもんね…。

























実は俺は、あのくりくりとした可愛らしい瞳が少し苦手だったりする。

一卵性双生児だというヒロトを見ている限り、彼方の目はツリ目であるようなのだが、顔の造形が幼いからかまんまるくてかわいらしい瞳をしている。
ヒロトと同じ緑色の瞳。時々、すべてを見透かされているのではないかと不安になる。

たとえば俺が泣いてるときとか、寂しいときとか、不安な時とか、何故か彼方は分かるみたいでそっと近くにいてくれる。背中合わせで座って、ぎゅっと手なんか握ってくれたりして。彼方の体温は低いけれど、それがやけに落ち着いた。
俺が怒ってるときはそれとなく落ち着くように諭してくれたりするところを見ると、やっぱり年上なのかなぁ、なんて思ってしまったり。って言っても、一つしか変わらない訳だけど。

「リュウジ」

だけど今、俺が庭の隅っこでカッコ悪く泣いてるところなんて見られたくなかった訳で。

もう、俺サッカーしたくないよ、なんて言ったら怒られるかな。サッカーがこんなにつらいなんて思わなかった。辛い、悲しい、もう嫌だ。

「リュウジ」

彼方はいつもと変わらない。そっと俺のそばにいてくれる。

俺なんてさ、頑張ってもセカンドランクでさ。こんなに頑張ったのに。かなり無理もしてると思う。でも努力が報われなくってさ、父さんに呆れられるんじゃないかとか思っちゃってさ。

「泣かないで」

「彼方…」

「リュウジが泣いてるとね、僕も悲しいよ」

そう言って彼方は力なく笑う。

彼方は、いつももっともっと苦しいのかな。普段何でもないような顔をしてるけど、やっぱりヒロトから邪険にされたりするのは悲しいよね。たった一人の家族だもんね。父さんがちっとも構ってくれないのもさみしいよね。だってお父さんがいないってことだもんね。

彼方の手が冷たい。それが今日は悲しかった。

「…彼方」

「なぁに?」

「今、幸せ?」

俺、これ泣きながら聞く事じゃ無かったかなぁ。

そう思ったけど、彼方は小さく笑って答えてくれた。

「リュウジがいつもみたいに笑ってくれたら、幸せだよ」

そう言う彼が、俺にはまぶしかった。





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