私ははっきり言って千石清純という男が大嫌いだ。女の子であれば誰彼構わず鼻の下を伸ばす男のどこがいいのか。
いつだったか、どこかで動物の恋愛対象についての小話を耳に挟んだ気がする。
異性であれば何でも構わないのがカエル、異性の中でも容姿で選ぶのがネコ、容姿と内面を考慮して選ぶのが人間、なんて誰かが言ってたっけ。
それが本当のことであれば、千石清純はカエルと同等ということだ。哀れなり、千石清純。
「ちょっと#名前#ちゃん!なんで水着じゃないの!?ここ海だよ!俺、#名前#ちゃんの水着姿を楽しみにしてたのに!」
「うるさいカエル」
「カエル?俺が?なんで?」
どうして私が好き好んでカエル野郎と一緒に海に来ているのか、否、強引に連れてこられただけである。
どういう理由か、私の友達は私の嫌いな千石清純と仲がいい。が、友達も千石を恋愛対象としては見ていない。いわば新しい彼氏を紹介してくれる"友達"だ。
遡ること数日前―――――
「ねぇお願い#名前#!一緒に行こう?私に彼氏できたら嬉しいでしょ?」
「いや、あんたに彼氏できたって私には何の得もないよね…?なんで私が嬉しくなるの」
「友達の幸せは大事にしなさいよ〜」
「彼氏できたら友達との約束ドタキャンするやつに言われたくないわ」
「う、それはごめんって…」
「彼氏なんてそんなに焦ってつくんなくても逃げないよ」
「…#名前#そんなこと言い続けて未だに彼氏の1人もできたことないくせに」
「何か言った?」
「いえ、なにも」
千石主催の合コン紛いの遊びに行きたいから人数を揃えたいらしい私の友達は、いくら断ってもしつこく誘ってきた。
「千石からも何か言ってよー」
「俺、#名前#ちゃんと一緒に行きたいなぁ」
「私は千石と行きたくない」
満面の笑みでバッサリ斬ってやった。さすがの千石も折れたかと思って表現を伺うと、いつものヘラヘラ顔だった。
「よし!わかった!この合コンに来てくれたら、俺はもう#名前#ちゃんにちょっかい出さない!」
「まじで?じゃあ行くわ」
「即答されると結構キツイものがあるけど!まぁいいや!!」
というわけだ。
金輪際、千石が近寄らない(そこまで言ってない)と言っているんだ。こんな好都合なことはない。1度の我慢と思って来た。
「私から誘っといて何だけどさ、#名前#水着持ってなかったの?」
「下に来てるよ?Tシャツとショートパンツで分からないだけで」
「それ水着の意味なくない?」
「泳ぐときに脱ぐ。千石に見せるのは癪だから、千石のいないときにするけどね」
「あんた千石のこと嫌いすぎじゃない?」
「あんなカエル野郎のどこがいいのか、私にはさっぱりよ」
「そんなこと言わずに、千石はあんたのことが―――」
一瞬、時が止まった気がした。
友達の声も、海の小波の音も、カモメの鳴き声も、なんにも聞こえなくなって。
ただ目の前に現れた王子様に目を奪われた。
「王子様…」
「はぁ?あんた人の話聞いてんの?」
王子様に見とれる私に友達は呆れているようだった。
私は千石を呼び止め、王子様の名前を尋ねた。
「ねぇ!千石!あの王子さ…あの人、誰?」
「ああ、あれは六角の佐伯くんだね。佐伯くん!やっほー」
「ああ!千石、今日はお招きありがとう。剣太郎やバネさんたちも連れてきちゃったけど、よかったかな?」
「もちろん!人数多い方が楽しいからね!」
「ははっ、ありがとう。ところでその子は?」
佐伯くん、という王子様は私のほうを見て微笑んだ。
「#名前#ちゃんって言うんだ!可愛いでしょー!でも俺のだから、いくら佐伯くんでも譲れないよ!」
「何いってんのよ!」
私の初恋を早速摘んでんじゃないわよ!と忌々しく思い、佐伯くんに見えないように千石の横腹に思いっ切りパンチをかました。
「いっ!!」
「#名前#です、よろしくお願いします」
「俺は佐伯虎次郎、よろしくね、#名前#ちゃん」
「は、はい!」
「千石の友達ってことは、君も山吹か。テニス部の応援に来たことはあるかい?」
「いえ、ありませんけど…」
「そっか、通りで見たことないわけだ。俺は六角中のテニス部で副部長をしてるんだけど、山吹中と練習試合したときも見なかったもんなぁ。君みたいに可愛い子なら、一度見たら忘れないだろうからね」
「そ、んな、可愛いだなんて…」
「冗談じゃないよ?俺はいつだって本気だからね」
にこっと爽やかに笑ったあなたに
溶かされてしまいそう
「俺が可愛いって言ったって軽く流すくせに、佐伯くんが言ったら真っ赤になるんだ…」
王子様にときめく私の隣で、おもしろくなさそうにしていた千石はまた別のお話。
いつだったか、どこかで動物の恋愛対象についての小話を耳に挟んだ気がする。
異性であれば何でも構わないのがカエル、異性の中でも容姿で選ぶのがネコ、容姿と内面を考慮して選ぶのが人間、なんて誰かが言ってたっけ。
それが本当のことであれば、千石清純はカエルと同等ということだ。哀れなり、千石清純。
「ちょっと#名前#ちゃん!なんで水着じゃないの!?ここ海だよ!俺、#名前#ちゃんの水着姿を楽しみにしてたのに!」
「うるさいカエル」
「カエル?俺が?なんで?」
どうして私が好き好んでカエル野郎と一緒に海に来ているのか、否、強引に連れてこられただけである。
どういう理由か、私の友達は私の嫌いな千石清純と仲がいい。が、友達も千石を恋愛対象としては見ていない。いわば新しい彼氏を紹介してくれる"友達"だ。
遡ること数日前―――――
「ねぇお願い#名前#!一緒に行こう?私に彼氏できたら嬉しいでしょ?」
「いや、あんたに彼氏できたって私には何の得もないよね…?なんで私が嬉しくなるの」
「友達の幸せは大事にしなさいよ〜」
「彼氏できたら友達との約束ドタキャンするやつに言われたくないわ」
「う、それはごめんって…」
「彼氏なんてそんなに焦ってつくんなくても逃げないよ」
「…#名前#そんなこと言い続けて未だに彼氏の1人もできたことないくせに」
「何か言った?」
「いえ、なにも」
千石主催の合コン紛いの遊びに行きたいから人数を揃えたいらしい私の友達は、いくら断ってもしつこく誘ってきた。
「千石からも何か言ってよー」
「俺、#名前#ちゃんと一緒に行きたいなぁ」
「私は千石と行きたくない」
満面の笑みでバッサリ斬ってやった。さすがの千石も折れたかと思って表現を伺うと、いつものヘラヘラ顔だった。
「よし!わかった!この合コンに来てくれたら、俺はもう#名前#ちゃんにちょっかい出さない!」
「まじで?じゃあ行くわ」
「即答されると結構キツイものがあるけど!まぁいいや!!」
というわけだ。
金輪際、千石が近寄らない(そこまで言ってない)と言っているんだ。こんな好都合なことはない。1度の我慢と思って来た。
「私から誘っといて何だけどさ、#名前#水着持ってなかったの?」
「下に来てるよ?Tシャツとショートパンツで分からないだけで」
「それ水着の意味なくない?」
「泳ぐときに脱ぐ。千石に見せるのは癪だから、千石のいないときにするけどね」
「あんた千石のこと嫌いすぎじゃない?」
「あんなカエル野郎のどこがいいのか、私にはさっぱりよ」
「そんなこと言わずに、千石はあんたのことが―――」
一瞬、時が止まった気がした。
友達の声も、海の小波の音も、カモメの鳴き声も、なんにも聞こえなくなって。
ただ目の前に現れた王子様に目を奪われた。
「王子様…」
「はぁ?あんた人の話聞いてんの?」
王子様に見とれる私に友達は呆れているようだった。
私は千石を呼び止め、王子様の名前を尋ねた。
「ねぇ!千石!あの王子さ…あの人、誰?」
「ああ、あれは六角の佐伯くんだね。佐伯くん!やっほー」
「ああ!千石、今日はお招きありがとう。剣太郎やバネさんたちも連れてきちゃったけど、よかったかな?」
「もちろん!人数多い方が楽しいからね!」
「ははっ、ありがとう。ところでその子は?」
佐伯くん、という王子様は私のほうを見て微笑んだ。
「#名前#ちゃんって言うんだ!可愛いでしょー!でも俺のだから、いくら佐伯くんでも譲れないよ!」
「何いってんのよ!」
私の初恋を早速摘んでんじゃないわよ!と忌々しく思い、佐伯くんに見えないように千石の横腹に思いっ切りパンチをかました。
「いっ!!」
「#名前#です、よろしくお願いします」
「俺は佐伯虎次郎、よろしくね、#名前#ちゃん」
「は、はい!」
「千石の友達ってことは、君も山吹か。テニス部の応援に来たことはあるかい?」
「いえ、ありませんけど…」
「そっか、通りで見たことないわけだ。俺は六角中のテニス部で副部長をしてるんだけど、山吹中と練習試合したときも見なかったもんなぁ。君みたいに可愛い子なら、一度見たら忘れないだろうからね」
「そ、んな、可愛いだなんて…」
「冗談じゃないよ?俺はいつだって本気だからね」
にこっと爽やかに笑ったあなたに
溶かされてしまいそう
「俺が可愛いって言ったって軽く流すくせに、佐伯くんが言ったら真っ赤になるんだ…」
王子様にときめく私の隣で、おもしろくなさそうにしていた千石はまた別のお話。
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