あなたの気持ちが伝わったから
夏休み直前の7月上旬。
雲行きはあやしいけど、所々晴れ間が覗く空の下を謙也と肩を並べて歩く。


「謙也と一緒に帰るん久しぶりやなぁ!もう2ヶ月くらいになるんとちゃう?」

顔で笑いながらも嫌みをたっぷり含ませた声音で話す。普段から構ってくれなさすぎて、私やって不安になるんやもん。

「せやから部活が忙しいって」

「ふーん」

「…部活と私どっちが大事なのとかそんなベタなのなしやで」

「そんなん聞きたないわ」

聞いたところで後悔するだけやろうし。


別に部活を休んでまで一緒に過ごしてとか、そんなんが言いたいわけやない。むしろ私はテニスを頑張る謙也が格好ええと思うし、好きなとこでもある。

でも、もうちょっとくらい私との時間をつくってくれてもええんとちゃう?

休み時間も放課後もずっと白石くんとか一氏くんと一緒におって、学校で私と話すことは極稀。

ついには、この前一氏くんに
「#名前#たちいつの間に別れたん?」
って聞かれた。

あまりにも関わらなすぎてもう別れたと思われたらしい。



「なぁ、寄り道して帰らへん?」

「寄り道?ええけど、どこ行くん?」

「着いてきたらわかるから。久しぶりに彼氏らしいことしたるわ」

そう言って私の手を取り歩き出した謙也の背中にきゅんとした。



「お祭り?」

「おん。七夕祭りやっとるの思い出してん」


そういえば去年も二人で来たんだっけ。あのときは付き合い始めたばっかりで、お互いにドキドキして緊張しっぱなしだったなー。


「ちょっとここで待っといて」

「え、どこ行くん?」

「すぐ帰ってくるから!浪速のスピードスターの俊足見とれよ!」


内心、祭り会場で走ったら迷惑なんちゃうかなとか思いつつ、いってらっしゃーいと送り出す。
…相変わらず無駄に俊足やな。


それからほんの3分ほどで謙也は帰ってきた。


「これやるわ!」と謙也が差し出してきたのは

「りんご飴?」

「去年来たとき、好きやって言うとったやろ」

「覚えててくれたん?」

「当たり前やろ。彼女の好きなもんくらい覚えとるっちゅー話や」



この1年で冷めたかと思ってたのに。
謙也なりに私のこと愛してくれてたんや。


「ありがとう」


お礼を言って、りんご飴を囓る。


飴の欠片と甘酸っぱいりんごの果汁が口いっぱいに広がる。


今年のりんご飴が去年より美味しく感じたのは、







部活に嫉妬して拗ねてごめんね。

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