カーテンの隙間から漏れてくる光が眩しくて、思わずふわふわの布団にくるまる。
この時間がたまらなく好き。こんな日はこのままここで過ごしてやろうかとそんな思いに駆られてしまう。

目を閉じてまた夢の世界へ入り込む寸前、鼻先にふわりとおいしい匂いが迷い込んできた。
自然と食欲が刺激されお腹の鳴る音に起床時間が近いことを知る。


くるまった布団から少し腕を伸ばし枕元に置いてある携帯電話で時間を確認すると普段起きる時間より一時間程経っていた。


自分はまだ布団に居て、食欲そそる香りが出ていると言うことは…まだ少し寝ぼけた頭を動かして、おいしい匂いの発信源。

それを作っているだろう愛しい姿を想像する。


大きな体に少し小さめのエプロンをつけキッチンに立ち、朝食を準備してくれているんだろう私の最愛の人。


ふと、今日の朝ご飯担当は私だったことを思い出した。
疲れているはずなのに、寝過ごした私を起こさず朝食の準備をしてくれているのか。

その優しさに心地良いくすぐったさが胸いっぱいに広がる。
もうずっと一緒に居るのに、こんな優しい気持ちにさせてくれるのはきっと彼だからなのだろう。




「おはよう」

「起きたか、おはよ」


味噌汁をお椀によそう横から声をかけると頭上から心地よい返事が返ってくる。


「…起こしてくれてよかったのに」

「幸せそうに寝てるヤツは起こせねぇよ」


恥ずかしい。
寝顔なんて何度見られても慣れないのに。


「卵いくつ食う?」

「一つ!」

「ん」

筧君は私の頭をくしゃくしゃと撫でるとお味噌汁をテーブルに置き冷蔵庫に向かって歩き出した。


卵を3つ手に取りコンロへ向かい、小さめのフライパンに油をしく。片手で器用に卵を割り落とし、まわりをカリッと揚げるように焼く。


「私、その焼き方大好き」

「知ってる。あと完熟手前な」

「ふふ」


いつも自分がやっている光景もこうやって隣で見ていると新鮮に見えて楽しくてつい眺めてしまう。それを筧君も知っているから、今は私の特等席になってしまった。


パチパチと油をはねながら焼けた目玉焼きは絶妙なタイミングでウインナーの待つお皿へ。

テーブルにはご飯にお味噌汁、サラダがメインの到着を待ちわびているように並べられている。
そこへ目玉焼きの乗ったお皿を置いて筧君は席に着く。


「私、お茶淹れるね」

「あぁ、頼む」


腰掛けたまま少し背伸びをする筧君を横目に、カップを並べてお気に入りの茶葉を戸棚から取り出す。ポットに二人分の量を入れ、お湯を注ぎ待つ間も他愛もないお喋りを交わす。


「水町君から連絡きた?」

「あぁ、昼過ぎにこっちに着くらしい。小判鮫先輩と大平、大西も一緒だってよ」

「そっか!じゃあ迎えにいってあげようよ!」

淹れたお茶を筧君に渡して、私も席に着く。
一口飲んでうーん、と筧君が唸る。


「そうしないと小判鮫先輩が不憫だからな…」


かつてよく見かけた記憶を思い出し向こうの状況を想像しているのかため息をつきながら答える筧君の、そうは言いながらも優しく細められた目と少し緩んだ口元から嬉しさが滲み出ているのがわかって微笑ましくて仕方ない。


昔のチームメイトに久しぶりに会えるのだから当然だろう。
私だって嬉しいのだから。


「午前中はゆっくりしとくか、午後からうるさくなるからな」

「うん、そうだね」



「「いただきます」」


ああ、今日も素敵な一日になりそうです。





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