中二のときに出会い、高二で交際し、大学に進学すると同時に同棲し始めた二人。
蛭魔は毎日アメフトの練習で夜遅くに帰ってくる。名前は彼の頑張っている姿が好きだ。
毎晩彼が帰ってくるのを待っている名前だが、どうやら今日は眠気に負けてしまったようだ。
蛭魔はなるべく音をたてないようにドアを開き、テレビを見ながら待っているであろう彼女に「ただいま」と言うが返事が返ってこない。
名前のことだから寝ているのだろうと即座に判断した蛭魔は、リビングへ行きソファーで横になる彼女の傍に立つ。
口を少し開き、むにゃむにゃと何かを呟いている。頬をつまみアホ面になる彼女。口許を上げると名前が身動ぎする。
「んあ・・・よ、いち」
「んなとこで寝てると風邪引くぞ」
「んー・・・寝てた」
よっこいしょ、と言って起き上がり首をゴキゴキ鳴らす。
まだ覚醒していないのかうとうとしていると、グーとお腹が鳴る。言わずもがな名前のだ。
蛭魔は、恥ずかしそうにお腹を押さえ上目で見つめてくる彼女の頭を撫でてキッチンに立つ。
冷蔵庫を漁るが魚、少量の野菜、調味料しかない。まぁいいかと適当に材料を取り包丁を持つ。
名前がそわそわと手伝いをしさそうにしているのが背中を向けていてもわかるが、彼女は不器用でなおかつドジだ。
最近やっとまともに掃除ができるようになったというのに、料理などさせたら真っ赤に染まった子供には見せられないものがでてくるに違いない。
(まぁ、不器用なとこも、あー、・・・・・・・・・可愛い)
魚を焼き、おひたしを作り、味噌を溶き入れていると名前が隣に来た。
「なんだ」
「もうすぐできると思って、皿持っていこうかなって」
「ああ・・・茶でも用意しとけ」
「はーい」
鼻歌でもしそうな雰囲気で冷蔵庫から茶を取り出す。
なぜそんなに上機嫌なのかわからないが、機嫌が悪くなるとめんどくさくなる性格なので放っておく。
テーブルに皿を並べ向かい合って座る。そして手を合わせる。
「いただきまーす」
「いただきます」
味噌汁をズズズと音を鳴らして飲むのが名前の癖だ。
頬を少し赤く染めてグビグビと飲む彼女。蛭魔は無意識に口許が上がっていることに気がつき、無表情に戻る。
「ふ〜、今日のも美味しいよ!」
「どーも」
魚の骨を取るのに苦戦している蛭魔を見て、幸せそうに微笑む。
「妖一、おかわり」
「自分で入れろ」
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