あの後、死にもの狂いでノボリさんから逃げて以来ギアステーションには近づいていない。
誰が変態がいる場所へのこのこ出向いたりするもんか。
けど、毎日のようにバトル三昧だった日々から突然引きこもり同然になってしまった生活に手持ちの子たちは不満たらたららしい。
反抗的な態度でも示してきたなら絶対に行かないと強く言い聞かせるんだけど、無邪気に「今日は行かないの?」と期待に満ちた瞳で見つめてきては、行かないとわかりしょんぼりと落ち込むを繰り返すのだ。
流石に良心が痛むし、それ以前にこの子たちの親として申し訳ない。

変態には会いたくない、けどバトルはさせてあげたい。
適当にトレーナー狩りでもしてバトルをするのもいいけど、あの廃人はびこるバトルサブウェイのバトルに慣れてしまうとトレーナーという一般人相手では物足りなくなってしまっている。
それはこの子たちも同じだろう。
まったく難儀な性質になってしまったものだ。



「それで久々にダブルに来てくれたんだ」
「はい。スーパーダブルにも以前から興味ありましたし」
「ぼくなまえがここまで来てくれて嬉しい!」

にっこり笑うクダリさんに、本当にあの変態と同じ双子の兄弟なのかと疑いたくなる。
片や変態、片や天使だ。
一気に手持ちの子たちのバトル不足を解消させるためにダブルトレインに挑戦して本当に良かった。
久々のバトルが嬉しかったのか、ストレスを発散させるように戦うこの子たちのおかげでクダリさんの元までたどり着くことができた。
今度挑む時はまたしばらくバトルをやめておくべきだろうか。

「でも本当になまえ強くなった。ここまで来るのも早かったし、ぼくびっくり」
「あはは、昔は本当にバトル弱かったですから。今じゃ私もすっかり廃人の仲間入りです」
「うん、いい具合にドMになったみたいで本当に嬉しい」
「は」

にこにこと変わらぬ笑みを浮かべるクダリさんに、背中を嫌な汗が流れる。
何だろう、すごく嫌な予感がする。

「ところでぼくね、バトルサブウェイとSMクラブって似たような物だと思うんだ」
「すみませんリタイアします!!」

予感が的中して、私は迷うことなく緊急停止ボタンに手を伸ばす。
しかしその手はボタンに届くことなくクダリさんに捕らわれてしまった。
手だけじゃなく、腰までするっと抱きつかれていつの間にか身動きができなくなってしまう。

「ひっ!」
「駄目だよなまえ、リタイアは相手がいいよって言わないと成立しないのに」

たしなめる声が耳をくすぐる。
金縛りにあったみたいに動くことができない。

「ぼくから逃げちゃだめ。逃がさない、なまえは逃げられない」

暗示をかけるように言葉を注ぎ込まれて、ぞわっと鳥肌が立つ。
ジュンサーさんこいつです!
痴漢がここにいます!!
心の中で必死に叫ぶけど、当然ながら声にはならず誰にも私の助けは届かなかった。
誰かテレパシーとか受信して助けに来てください私の貞操が大ピンチです。

「なまえ、いい匂い。ふふっ、ねえ、本当に相性がいいんだね。こっちの相性はどうかなあ?」
「いやいやいや!それはギリギリアウトの親父ギャグですってクダリさん!!」

下半身に降りてきた手に思わず叫んで突っ込むと、クダリさんが心外だと言いたげに唇をとがらせた。

「ぼくギャグでこんなことしない!本気でなまえと一戦したいって思ってる!」
「だからしましょうよポケモンバトルを!ここそういう施設ですよね!」
「今ここはぼくとなまえだけのラブホテルだよ?」
「うわああ言い切った!ちょっとそれサブウェイマスター失格ですよ!!」
「ここではぼくたちがルールだもん」
「あーそうですかもうそれでいいんで手を止めましょう!!!」

ギャンギャン騒ぎながらもクダリさんの手は自重せず私の体をそこかしこと撫でまくっている。
脇腹を何度も撫でさすられたまらず崩れそうになるのに、クダリさんがしっかりと抱きしめてきて座り込むこともできない。

「ジュンサーさんに突き出されたいんですかクダリさ、ぅあっん!」

服の裾からクダリさんの手が侵入してきて、思わず悲鳴とも嬌声ともつかない声が上がる。
その声にクダリさんが嬉しそうに笑った。

「なまえかわいい。もっとかわいい声、聞かせて」

するすると這い回る手に、これだけはしたくなかったんだけど貞操には変えられないと覚悟を決める。

「クダリさん、ごめんなさい!」
「え、なに、−−−−−−っ!!!」

自由になっていた手で、クダリさんのあれを思いっきり握りこんだ。
い、いいい嫌な感触!!
しかし効果は抜群だったらしく、声にならない悲鳴を上げてクダリさんがその場に崩れ落ちた。
その隙に今度こそ緊急停止ボタンを殴るように連打して、魔のバトルサブウェイから脱出する。
クダリさんへの罪悪感?
そんなもんあるか、痴漢なんてみんなまとめて不能になればいい。

もう二度と来るか、こんな相性最悪な所!!



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