忙しいからしばらくは寄れないと申し訳なさそうな声で連絡が入った。
家にもしばらく帰れそうにないと。
ああそうですかとだけ返したら、少し寂しそうな顔をされてしまった。
そういう顔させたいわけじゃないんだけどな。





「なまえさん、また煙草の本数増えてません?」
「え、嘘」

後輩に指摘され、ケースの中を確認してみると確かに普段よりも減りが早い。
あと数本だけがカサカサ鳴るケースを見てため息をついた。

「また何かストレスですか?仕事立て込んでるようでしたらお手伝いしますけど」

私が煙草の本数が増えるのは、決まって何か仕事でのトラブルや大量の書類やらに追われてストレスが溜まっている時だ。
この後輩はその度に愚痴を聞いて助け船を出してくれる良い子である。
先日ゴミ箱行きになってしまったシガレットケースをくれたのもこの子だった。
煙草は吸わないのに喫煙者に理解がある優しい子で、私が男なら彼女にしたいくらいだ。

「あー、うん、大丈夫。多分原因は仕事じゃないから」
「ですよね。最近の先輩そういう様子ないですし。……ああ、彼氏さんのことですか?」
「彼氏、って言えるのかわかんないけどねー。良い男友達って感じじゃないかな」

好きだとは言われた。
お互いの家に行き来もする。
じゃれつくことだってあるし、軽いキスぐらいなら何度かしている。
けど、そのどれもがお遊びみたいで、恋人同士っていうのとは少し違う気がするのだ。
そもそも私は一度ノボリさんからの告白を手ひどく断ってるし。

「最近忙しいらしくて会えないのさー。多分それでイラついてるんだと思う」

毎日とは言わないまでも日を置かずに会っていたのに、突然ぱたりと会えなくなってリズムを壊されたように感じているんじゃないだろうか。
無条件で甘やかしてくれる彼は、思っていた以上に依存度が高い。

「イラついてるというか、今の状態ってなまえさんが煙草切れた時みたいですよ。よく言ってる禁断症状というか」
「はあ!?」

ノボリさんがいなくて禁断症状って、どんな恋愛体質だ。

「いやだって、なまえさんが煙草吸いながらそんな険しい顔してるの初めて見ましたよ。ストレス溜まってる時だって煙草吸うと力が抜けた顔されてるのに」
「う…」

自覚があるだけに反論ができない。
つまり、ノボリさんが私にとって煙草と同じぐらいの位置づけになってるってことだろうか。

「よっぽど好きなんですね、その男友達さん」

にやにやとからかう様に後輩が笑う。
くそう、可愛くない。



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