「アナタがエメットの新しい恋人ですか」
「あっ、は、はい!私、エメットさんの彼女、です」
頬を染め愛らしく両手で顔を覆い恥らう姿はどう見てもティーンエイジャーのそれです。
いえむしろこの国のティーンエイジの方がよほどませている。
東洋人ということを差し引いてもこの全身から漂う幼さ、デレデレと普段の3割増しで笑顔を放つ愚弟に軽蔑の眼差しを向けるのも仕方ないというものでしょう。
「ペドフィリア、いえ、ロリコンと言った方が正しいのでしょうか。ここまで腐っていたとは思いませんでしたよ」
「ちょっとヤメテよそういう言い方!愛があれば歳の差なんて関係ないでしょ!」
「お前にとっては関係ないかもしれませんが国の法律的にはアウトなんですよ。生まれてこの方長い付き合いでしたが、それもどうやら今日までのようです。ブタ箱でも元気で暮らすのですね」
「だからヤメロって言ってるでしょどこに電話する気だmotherfucker!」
それは無論ジュンサー様をお呼びしてこの性犯罪者をしょっ引いていただくつもりですが。
我々のやり取りを大人しく見守っていたなまえ様が、どうやらようやく事態を把握したらしく憤慨するようにワタクシに向けて抗議してきました。
「ペドだとかロリコンだとか聞こえてきましたけど、もしかしてインゴさん私のことすっごく子供だと思ってます?これでも私れっきとした大人なんですよ?」
ええ、子供は皆そう言うのです、早く自立した大人になりたいという気持ちの表れですよねワタクシにも覚えがございますよ。
「なまえ大丈夫、ボク歳の差なんて気にしない!無理に大人になろうとしなくたって、ボクは今のなまえが好きだよ!」
まったく相変わらず反吐が出るような甘ったるいセリフを吐くものです。
こいつは普段から甘いものばかり食べているから頭までその糖分でやられてしまったのでしょう。
しかし、これまでの女なら目を輝かせ喜んだその甘ったるいセリフに、なまえ様はエメットにも怒りの表情を見せました。
好きだと言われて怒るとは、珍しい反応もあるものです。
「やっぱり、エメットさんまだ私の歳疑ってたんでしょう!いいですよ、ちゃんと今日はパスポート持って来たんですから!」
ぷりぷりと小さな子供さながらに可愛らしく怒って見せるなまえ様が差し出したパスポートを言われるがままに受け取ると、本物をさらに幼くしたような写真に目がいきます。
ああやはりティーンエイジで間違いないではありませんかと思いながら、横に書かれた生年月日を確認すると、ワタクシが驚くより先に叫び声が上がりました。
「ハア!?ボクより2つ上!?」
嘘だ!
とでも言いた気ですが、なまえ様がまさかパスポートを偽造などするわけもなし。
何よりえっへんと無い胸を張るなまえ様の様子を見るに、この信じがたい数字は真実でしかないようです。
「だから前から言ってるじゃないですか!私姉さん女房なんですよ!」
いえそれは何か違う気がいたしますが。
東洋の神秘という言葉が頭に浮かび、ここまでくるとむしろ東洋の魔女と言った方がより正確な気がしてきました。
童顔にも程があるでしょう。
さて愚弟はと言うと、驚きに見開いていた目を恍惚とした眼差しに変えなまえ様をじっとりと見つめていました。
切り替えが早いのは長所だったはずですが、こういった場面を見る度血を分けた兄弟が単純馬鹿にしか思えなくなります。
「じゃあなまえと×××しても問題ないし、×××××お願いして×××とかしてもらっちゃっても犯罪にならないんだね!よかった、これで気兼ねなく愛し合えるよmy sweet!!」
どうやらついでに変態という蔑称も必要なようで。
恥と言う概念を母の胎の中に忘れてきた愚弟の言葉に真っ赤になったなまえ様がエメットに抱きしめられる5秒前のできごとでした。