「おかえりなさい、クダリさん」
「た、だいま、なまえ」

いつも通りの笑顔で笑うなまえにお出迎えしてもらったのに、笑顔が引きつっちゃった。
ノボリからあんなこと聞いた後で、いつも通りになんてできるわけない。

「とりあえずご飯にします?さっき出来たばかりなのでまだ温かいですよ」
「うん、そうする」

何でなまえは教えてくれなかったのかな。
いつもあんなに連絡してくれるのに、告白されたなんて一言も言ってくれなかった。
疑いたくなんてないけど、隠すってことはやっぱりそれなりの理由があるのかな。

そこまで考えて、なまえから一度だってこんな疑い持たれたことないって思い出した。
ストーカー被害を隠してた時も、なまえは浮気なんて全然疑わなかった。
自分が被害を受けたって、ぼくに八つ当たりも怒ったりもしなかった。

なのにぼくは、ただなまえが教えてくれなかったってそれだけで疑ってる。
いつもいつも、なまえはぼくのこと好きでいてくれてるのに。

「う、ぅ……っ」
「クダリさん!?どうしたんです、何かつらいことでもあったんですか?」
「ちが、ごめ………っ」

こんなに簡単に泣き出しちゃうなんて、ぼくすっごく情けない。

「ね、なまえ、今日告白されたって、本当?」
「やだ、ノボリさん喋っちゃったんですか?だから念押ししたのに」

あっさり白状されて、思わず息が詰まる。
なまえが浮気するなんて思わないけど、それでも、やっぱりぼくだって恋人が告白されたなんて聞いたら良い気持ちはしない。

「大丈夫です。あの人、クダリさんに負けた腹いせで私を寝取ってやろうと思ってただけみたいですし」
「ん、んん?そう、なの?」
「ええ。ですから、それにふさわしい対応をして丁重にお帰りいただきました。詳しいことは不快になるので伏せますね」

何かすごく怖くなることをさらっと言われたけど、今回は絶対に突っこまない。
相手側の自業自得だもん、うん。

………大怪我とか、してないといいけどなあ。

「ノボリさんを通じて私のことを知ったらしいので、無駄に責任を感じちゃったみたいで。一応事後報告したんですけど、それは余計だったみたいですね。クダリさんに心配かけちゃいました」

ごめんなさいって言いながら、なまえすっごく嬉しそう。
ぼくも前までヤキモチ焼かれるの嬉しいって思ってたけど、なまえの場合心配が先立つから何だか複雑な気分。
なまえがヤキモチ焼いたらまず相手に危害を加えないように説得から始まらないといけないし。

「私、クダリさんと幸せになるって決めたんです。あんなどうでもいい奴に、その幸せを少しでも邪魔されたくなくて、つい秘密にしちゃいました」

珍しい言葉に、思わずなまえの顔を見つめる。
だって、あのなまえが、ぼくと幸せになるって。

「クダリさんが私を幸せにしたいと思ってくださるのなら、私も幸せになりたいです。重くても、歪んでても、好きでいてくださるんでしょう?」
「うん、………うんっ。ぼく、なまえが好き、大好き!」
「私は愛してますけどね」

そんなの、ぼくだって愛してる。
ぼくがなまえの幸せを願えばいいって言うなら、いくらでも願うよ。
重くても、歪んでても、なまえはぼくの大切な人だもん。
だから、何度でも言うの。

「ぼくと一緒に、幸せになって」





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