「なまえ様、受け取ってくださいまし」
「ぼくもこれあげるー!」
「え、何くれる……うっわ気持ち悪!!」

ノボリとクダリにそれぞれ手渡されたのは手乗りサイズのサブウェイマスター人形。
何これ、ピッピ人形の代わりにでもしろってか。

思わず叫んで取り落としそうになった人形をクダリが慌ててキャッチする。

「気持ち悪いってなまえひどい!これ可愛いでしょ!?」
「わたくしたちにそっくりではないですか、どこが気持ち悪いのです」
「そっくりすぎる所だよ!!」

手乗りサイズということを除けばノボリとクダリに瓜二つだ。
というか2人とも双子で同じ顔なんだから、この場には同じ顔が4つもある。

どうして人形にするにしてももっとデフォルメしたり素材を変えたりしなかったんだろう。
これ寝ている時にふと目が合ったりしたら眠れなくなるパターンじゃないか。
今は目を閉じているからまだいいけど、私はリアルな人形の無機質な目っていうのが苦手だ。

「もっと可愛い人形だったら受け取るけど、これ部屋に置いても怖いだけだから」
「なまえ様、こちらは人形ではありません」「ぼくたちモデルのボーカロイド!」
「ぼーかろいど、って、最近よく聞く音声合成ドール?」

丁度このくらいの手乗りサイズの歌って喋れる愛玩人形という物が最近人気らしい。
ジムリーダーや四天王みたいな有名人の姿かたちをしたボーカロイドなら私もお店に並んでいるのを見たことがある。

「そうそれ!」
「ご当地ボーカロイドとして試験的にサブウェイマスターモデルというものを作ったらしいのですが、ライモンシティには既にカミツレ様モデルがございますので丁重にお断り申し上げたのです」
「これサンプルで送られてきた!でもぼくたちが持ってても気持ち悪いし、丁度いい所にいたなまえに押し付けようと思って!」
「ご丁寧な説明どうも。クダリあんたいい加減オブラートって物を覚えないとその内ぶん殴るわよ」

言葉通りに押し付けられた人形、もといボーカロイド2体を抱きしめながら何なら熨斗付けて返してやろうかとも思ったけど、この2人のことだしいらない物だからゴミ箱に放り込むなんてこともやりかねない。
無駄に技術が詰まった機械をぞんざいに捨てるくらいなら私が使ってやろうじゃないか。
機械音痴だし正直このデザインはかなり不気味だと思ってるけど。

「まあ、ノボリとクダリを適当に躾けて2人の目の前で喘ぎ声演奏させるってのも面白そうだしね」
「ノボリとぼくの喘ぎ声って何それなまえのえっち!」
「仮にもサブウェイマスターに何てことをさせるつもりですかあなたは!」
「じゃあね、素敵な演奏を期待してて」

ぎゃんぎゃん騒ぎ出した2人に軽く手を振って、取り返される前にそそくさとギアステーションを後にする。
押し付けられたんだから、どう使おうと私の勝手じゃない。




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