ほんのり甘い


こんこんと、寝室の窓を叩く音が聞こえてきた
三階にある寝室にわざわざ外から会いに来る人なんて、今のところ一人しか思いあたらない
「……なんですか、レムレス先輩」
「おはよ、お菓子届けに来たよ」
ほうきに乗ってやってきたレムレス先輩は腰に着けていたのであろうお菓子の入っている袋をはいと渡そうとしてくる
「…いりません」
「えー?せっかく作ったのに、いらないの?美味しいよ?」
袋を開けて中に入っていたクッキーを口に向けて差し出してきた
おい、ほうきから落ちるぞ
「危なっかしいしいらないんで帰ってください」
「そんなこと言わないで、食べてみればわかるよ」
「わかるって、何がですか」
「うーん、僕の気持ち?」
…意味が分からない
気持ちって何さ、お菓子大好きな気持ち?別にいいんだけれど
「何の気持ちかわかりませんが、本当に帰ってください」
「そっかあ、わからないかあ
じゃあこれをあげるね」
「え、は?だからいらな、」
「目的は果たしたから僕は帰るね、ばいばーいっ」
「ちょ、待って!」
………袋ごと置いてきやがった
「いらないっつってんのに……ん?」しょうがないからクッキー食べちゃおうと思って袋の中を覗いてみれば、中にはなんか水色の小さめの可愛いメッセージカードが
どうせ「ちゃんと食べてね」とか、そういうことだろうとメッセージカードを手に取って見てみる
「……………はっ?」
そこに書いてある言葉が見間違いだと思って目を擦る
が、文字は変わらない、寧ろ、はっきりと見えた
そこには綺麗な字で、すきだよと、一言
「す、すき、だ、よ、よよよ……!?」
顔が熱くなってきて、どうすればいいのかわからなくなってしまった
「なっ…に、書いてんのあの先輩!馬鹿じゃないの!?」
そう言ってみるけれど顔は熱くなっていくばかり
「……クッキー…」
とりあえず食べてみようと思って口に入れたクッキーは、悔しいけど、やっぱり美味しかった
「…これ以上のクッキー作ってやる」
誰に宣言した訳でもない言葉を、今日明日中に実行してやろうと思う
それで、レムレス先輩をうんと驚かしてやる
渡す時は勿論、返事を書いたメッセージカード付きで


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