同棲生活始めます
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ピンポーン
そんな感じのチャイムの音が聞こえた
つまり来訪者だ
正直こんな身体で来訪者の前へ行きたくはないが、それも今の俺に課せられた使命のようなもの、耐えようではないか
「はーい」
小さな身体の為声がちょっと高い、が、それにプラスして小さな子供らしさを演出
完璧だ、これは子供だ
がちゃりと音を立ててドアを開けると一人のおばあちゃんが立っていた
誰だ、分からない
とりあえず、挨拶しなきゃ
「えっと、こんにちは」
…この後ってなんて言えばいいのだろう
正直おばあちゃんだあれ?なんて恥ずかし過ぎて言えない
くそっ、羞恥心よ、今だけ消えてくれ!
「あ、お、おばあちゃん、だあれ?」
首を傾げるなんて馬鹿なことするんじゃなかった
穴があったら入りたい、いや、寧ろめり込みたい
こんなこと人生初だ、最悪だ
というかおばあちゃん反応してくれほんとやっちゃった感満載だから!
「ふふ、ふふふっ」
反応してくれと思ってたらいきなりおばあちゃんは微笑みながら俺の頭を撫でた
何が何だか分からない俺を余所に頭を撫でるだけ撫でてにこりと笑いかけるおばあちゃんに唖然としていた
「あ、あの」
「うん、君ってばもはや勇者だね」
「へ?」
「こんにちは、ボクだよ、一昨日のあれ」
「へ?あ、ああ、あの白いの……って、はああ!?お、お、おばあちゃん!?本体おばあちゃん!?」
色々突っ込みどころはあったが一番に思ったのはそれだった
おばあちゃんだとは思わないから凄く驚いた
相手はおばあちゃんなのに今まで失礼な口叩いてたなと思った
「い、今までは無礼な口を聞いてしまってすみませんでした」
「あ、おばあちゃんだから謝ってくれてるんなら大丈夫、これは仮の姿だから
君の保護者になる為におばあちゃんの姿で来てみたよ」
「ほ、保護者?いや、だからと言っておばあちゃんじゃなくても…てか、なんで保護者に?」
「そろそろ何かと大変だろうと思ってね、助けにきたよ」
「あ…」
確かに大変なことが増えてきた
椅子がないと水道が使えなかったり、料理が出来なかったり、買い物出来なかったり…てか基本この姿の所為じゃん
「なあ、全部もとの姿に変えればいい話なんじゃないか?」
「駄目だよ、ちゃんと過程は踏まないと
幼少の記憶がないと色々面倒だからさ、ボクが」
「俺じゃないのかよ!」
うああ本当に保護者になるのかよ、大丈夫か!?俺やっていける気がしない!
「と、とりあえず、色々突っ込みどころはあるけれど、こんなところ突っ立って騒いでたら近所の方の迷惑だから中に入って!」
「やった、おじゃましまーす」
わーいなんておばあちゃんの格好で言うなよ、違和感ハンパない
「あ、お昼ご飯まだでしょ?作ってあげる」
「え、あ、本当か?ありがとう」
「いえいえ、その代わりボクと同棲生活だからね」
「ああ、わかっ…ってない!何言ってるんだよ!同棲生活とかしないから!」
「いいの?大きくなるまで大変なのに?」
「う…それは……わ、わかっ…た、同棲生活、する」
「どれだけ嫌なの」
「だってどっち選んでも大変だし」
「ひどいなあ
でも了解したしいっか、キッチン借りるね」
教えてもいないのに普通にキッチンに向かって歩いていくところを見ると、やっぱり一昨日のやつだなーとか思った
まあ、本当に色々大変だったから良かった
とりあえずこの人?と同棲生活、始めますと宣言しよう
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