小説 | ナノ


▼ 暖めあう





冬の日の夜。周りが見えない程の暗闇だ。それに、凍えてしまいそうなくらいに寒い。
別に屋外にいるからではない。ダンテとバージルと私は奇跡的に事務所にあった蝋燭に火を灯し、安心する我が家のベッドに座り、事務所にあるありったけの毛布や上着にくるまりながら寒さに耐えていた。
暗いなら電気を、寒いなら暖房をつければ良いと、普段なら思うのだが、スイッチを入れてもウンともスンとも言わないのだ。
それもこれも、命懸けにもかかわらず安い依頼料で悪魔を退治させる依頼人達と、借金まみれの家主であるダンテのせいだろう。

「さみぃ……」
「誰のせいだろうな」

小さく愚痴を溢したダンテを冷たくバージルはあしらった。
そのままダンテは、拗ねたように私の肩にもたれ掛かってくる。

「次の依頼来たら、半年分の電気代が払えるくらいの依頼料だと良いんだけど」
「モリソンとレディに頼んでくるか」
「レディはやめろ。この前、渡された後に貸した分を返せと半額以上持っていかれたのを忘れたか?」
「そういえば、モリソンにもちょっと借りてなかった?」

ひもじい。なんてひもじいのだ。デビルハンターという仕事は肉体的にも懐にも優しく無いと、3人揃ってため息が出た。
雑談をしながら紛らわしてはいるが、やはり寒い。
寒さで悴む手を擦っていると、ダンテとバージルは然り気無く手を握って暖めてくれた。

「名前、手、冷たいな」

ダンテの大きな手が、私の手を包み込むようにして暖めてくれる。
ダンテの手も少し冷たいが、グローブのおかげか私よりは暖かい。それに、繋いでいると安心する。

「寒ければ言え。もう少し近付いてやる」

密着していたダンテよりは、少し離れていたバージルが体をほんの少し寄せてくれた。
今は肩が少し触れあう程度なのだが、私から言わなければきっと照れくさくて近付いてくれないのだろう。

「うん。少し、寒いかな」

やはり照れくさそうに近付いてきてくれる。強面な見た目に反して可愛らしくて、思わずにやけてしまった。
それを見ていたダンテは、やれやれと言いたげに口を開く。

「もう少し素直に甘えれば良いのにな。バージルは」
「……黙れ」

そっぽを向いてしまったバージルに、ダンテと私は顔を見合わせて小さく笑った。
電気がつかないのも、寒いのも困るが、2人の優しさを改めて確認が出来るのは嬉しいものだ。いろいろ大変だが、2人と一緒にいれて幸せだなぁと、考えてしまうそんな夜だった。





END

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