小説 | ナノ


▼ ただいま






疲れきった体を無理矢理動かしながらの帰り道。時計を見ると、もう深夜の1時を回っていた。
元々の疲労感が、時間を見た瞬間にドッと増す。
いくら任務とはいえ、長引き過ぎだ。元々、4日の予定のはずだったが、家を開けて7日と少しが経過していた。名前という恋人と同棲をし始めたのは良いが、会う時間は前とあまり変わっていない気がする。
家に着き、消された明かりを見る度に、呆れられて出ていかれたんじゃないかとヒヤヒヤしてしまう。
軽く深呼吸をしてから、扉を開けると、外から見た通りに部屋の明かりは消されていた。
消されていた……が、なにやらソファーの上で何かが動いている。不信に思いながら明かりをつけると、ソファーの上には名前が何故か俺の上着を抱き締めて寝ていた。

「……名前?ここで寝ると、風邪引くぞ」
「ん……へ……レオン……?……レオン!?」

軽く肩を揺すって起こすと、名前は俺の上着を固く抱き締めた飛び起きた。
暫く呆然としていると、はっとして上着を隠した。

「き、今日帰ってくるとは……。あの、ご飯とかは?なんかあったかな……」
「食事はいい。それより、後ろに隠したものが気になるな」

気づかぬ振りもせずに指摘するのは、流石に意地が悪かっただろうか。
いや、でも、ここまで焦っている名前を見る事もあまり無いだろう。

「いや、その、寒くて」
「それはクローゼットの中に入れていたはずだが?」
「……勝手に出しました。ごめんなさい……」

早々に折れる彼女に、少し笑ってしまった。
恥ずかしそうに項垂れる名前の頭を軽く撫でると、俺を見上げて見つめてくれる。

「謝らなくて良い。……寂しかったか?」

こくりと、一度だけ頷く。
ああ、やっぱりかと、申し訳なく感じていると、名前は口を開いてくれた。

「クローゼットの中整理してたら見つけて……レオンの匂い、ちょっとして……安心したというか、寂しさを紛らわせたというか……」
「……悪かったな」

お詫びに、というか、俺がしたかっただけだが、名前を痛くない程度に抱き締めると、彼女はしっかりと背中に腕を回して抱き締め返してくれた。

「でもな。そのくらい、別に照れなくても良いだろ」
「いや、匂い嗅いで安心って!私、変態みたいじゃん!?引かれるかもって思うじゃん!」
「俺は安心するけどな。名前の匂い」
「あ、あぁ……そうですか……」

更に顔を赤くさせた名前をなだめるように、頭をもう一度撫でた。

「あ、言い忘れてた」
「ん?」
「おかえりなさい、レオン」

柔く笑う名前に、仕事の疲れも、家の扉を開ける前の不安も、全てが吹き飛んだような気がした。

「ああ。ただいま」







END

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