小説 | ナノ


▼ ぬくもり





相棒であるハンクの家。この場所は、もう私とコナーにとってはもう1つの家みたいなものだろう。
ズボラで二日酔いなハンクに代わって、私はキッチンで料理を、コナーはリビングの掃除をしていた。
のんびりと下ごしらえをしていると、後ろのリビングでなにかが割れたような大きな音がした。ついでに、あの大人しいスモウの吠える声も。
大慌てでリビングの方を振り向くと、呆然としたコナーと、心なしか困った顔をしているスモウが居た。

「ど、どうしたの。大丈夫?」
「名前……グラスを割ってしまいました」

コナーの手には、大きなガラスの破片が乗せられていた。
持った拍子に切れたのであろう、ブルーブラッドも流れて床にポタポタと垂れている。

「ハンクは、いつもこのグラスで飲んでいました。きっと大切なものかもしれない」

しょんぼりするコナーに、スモウが寄り添って慰め始めた。スモウの優しさを誉めるように頭を撫でてあげる。そのまま、コナーの怪我をしてしまっている手も撫でてみたが、まだ悲しそうな顔のままだ。

「とりあえず、片付けないとね。あと、手当ても。きっとハンクなら怪我してる方が怒るよ?」
「……はい」
「おい、なんか割れた音したぞ」

コナーの肩がびくりと跳ねた。
二日酔いで少し辛そうなハンクが、音を聞いてふらふらする頭を押さえながら様子を見に来てくれたみたいだ。
不安そうなコナーと、散らばったガラスの破片と血痕を見て察してくれたのだろう。困った様に此方に歩いてきた。

「すみません、ハンク……」
「ガラスを素手で掴むバカが何処にいやがる。名前に手当てしてもらえ」

もうコナーは泣き出してしまいそうだ。早くフォローしてあげれば良いのにと、ハンクを見ると、バッチリ目があった。
私の言いたい事が伝わってくれたのか、照れくさそうに頭をがしがしと掻いて、私から視線を外し、小さく口を開いた。

「……だいたいな、そんなもんは消耗品だ。また買えば良いだろ。それに、そんなんで怪我する事はねぇよ」
「気にしてない、それより怪我は大丈夫か?って、ちゃんと言えば良いのに」
「おい、名前。お前、最近生意気だぞ」

ハンクに愚痴られながらも、コナーを見ると、さっきの不安は吹き飛んだような顔をしている。スモウも、安心したのか尻尾を振ってハンクにすり寄っていた。

「僕の怪我を気にする必要は無いと、前に何度も言いましたよ」
「そう言われても、気になるものは気になるからね。迷惑?」
「いえ、僕は名前とハンクのそういう所が好きなので、迷惑だなんて思いません」

意外な言葉に驚いた私は、嬉しさで思わず笑ってしまった。ハンクは照れくささの限界で部屋に戻って行ってしまったが、コナーはその反応に満足そうなので良しとしよう。






END

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