小説 | ナノ


▼ みつあみ




ソファーに座って寛いでいるククリを後ろから見ると、黒いフードからぴょこんと飛び出す銀色の三つ編みが目に付いた。
何気なく三つ編みに触ってみて、いつもの悪い性格からは考えられないくらいに綺麗に結ぶなぁと弄りながら考えていると、舌打ちが聞こえる。

「鬱陶しいぞ」
「もうちょっと良いじゃん」

嫌そうにため息を吐かれたが、手を退けないのは許可されたという事だろう。その証拠に、弄っていても、もう口出しはされなくなった。

「ククリの髪は綺麗だね」
「手入れなんてクソ面倒な事、した事は無いがな」
「すれば良いのに。かわいくなるよ?」
「正気か、貴様」

心底嫌そうな声を出されてしまった。ついでに私は正気だ。
この綺麗な髪が羨ましい。髪質もだが、乱れが無い結び方もだ。不器用な自分ではここまで綺麗に結べない。

「ねぇ、ククリ。私の髪も結んでよ」
「断る」
「そう言うと思ったけど、お願い」

三つ編みを軽く引っ張りながらおねだりすると、早々に諦めたのか、こっちに来いとククリは自分の膝を指差した。
遠慮無くククリの膝の上に座ると、ククリの指が髪を透いてくれる。

「もうこんな事は二度としてやらないからな」
「今度、ヘアゴム持ってくるから。またやってね」
「貴様は言葉が通じないのか?」

ちゃんと聞いてくれるかわからない約束をしてる間に、早々にククリは結ぶのを終わらせた。
三つ編みの先を見ると、ヘアゴムが無いのに綺麗に結んである。すぐにほどけてしまうのが勿体ないくらいだ。
お礼を言って、ククリの膝の上から移動して隣に座ると、じっと此方を見つめている。

「どうしたの。似合わない?」
「髪」
「ん?」
「お前の方が綺麗だろう」

ククリは照れくさかったのか、そっぽを向いてそのまま黙り始めてしまった。
照れくさいのは私もなんだけど、嬉しさの方が上回ってしまったようだ。抱き付くのもそれはまた恥ずかしいので、ほんの少しだけククリの肩に寄り添ってくっつくだけにしておいた。





END

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