小説 | ナノ


▼ サボり





いつもよりかは静かな午後。
執務室のソファーに座っている私の膝の上には、綺麗な緑色の髪と、起きているのだか寝ているのだかわからない綺麗な顔があった。

「あの、ハザマさん。起きてます?」
「なんですか」
「そろそろ離れませんか?」

常日頃から忙しいと口にしているハザマさん。忙しいらしいのに、私がソファーに座って休んでいたら、急に膝の上に頭を置いてきた。お仕事中なのでは?と言ったが、休憩だから問題ないと言われ、そのまま流れるように膝枕をするはめになってしまった。

「お疲れの恋人に向かってなんて事を……私、流石に寂しいですよ」
「今は上司と部下なのでは?」
「冷たいですね。もう少し良いではありませんか、膝枕」
「はぁ……良いのかな」

机の上に積まれた資料を見ると、今日1日で確認が終わるかどうかの量だ。残業もありえるだろう。

「ハザマさん。今日、家帰れなくなりますよ?」
「なら、此処で二人で寝泊まりですね。いやはや、困りました」
「困ってる声じゃない……」
「困っていませんし?」

膝に顔を擦り寄せてくるハザマさんを撫でると、嬉しそうな声が聞こえた。思わず、もう少しこのままで良いかと考えが過ってしまって、いやいやダメだろうと自分でツッコんでしまった。
相変わらず、(言ったら怒られそうな単語だけれど)猫なで声で私の名前を呼ぶ。今日は物凄く甘えてくるな。

「名前さん、名前さん」
「はいはい。なんでしょうか」
「今日はもう二人でサボりませんか?」

うっすらと金色の眼を見せて、先程とは違う色気のある声で、唇同士が触れる程の距離で誘ってくる。
それに弱いのを知っていてやっているのだろう。私の弱点を全て知っているであろうハザマさんに勝てるわけないじゃないか。

「……あと」
「あと?」
「1時間程なら」
「仕方ないですね。それで許してあげましょう」

仕方ないは、私の台詞だと思うけれど。
軽くキスをしてきたと思ったら、先程と同じく私の膝に頭を預けて横になった。
彼には甘い自分を叱ってやりたいが、嬉しそうなハザマさんを見て、まぁ良いかと思えてしまう時点で叱っても無駄なのだろう。




END

prev / next

[ back to top ]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -