小説 | ナノ


▼ 酔いどれ





思いの外、名前は酒に弱かった。
いや、私が強いのは自覚しているが、まさかここまでとは。
大切な人との晩酌に気分が良くなり、私の呑む速度が少し早かったのもあるのだろう。申し訳無さもあるが、気だるそうにする名前が愛しく見える。

「大丈夫?」
「眠い……」
「今日はもう寝てしまおう。明日は私も暇を貰ったから、二人でゆっくりしようか」
「……ごめん」

何を謝る必要があるのか。私に気を使っているなら、謝る事などないのに。
動くのが辛そうな名前を抱き上げ、寝台まで運んでいる途中、珍しく甘えるように寄り添ってくる。
普段してこない行動に、余裕が無くなりそうだ。

「そういう事をしていると、もう少し付き合わせる事になるけれど」
「……そんなつもりなかった」
「私はそういう風に見えた」

胸の中で拗ねる彼女が愛らしくて、思わず頬に口を付けた。既に赤くなっていた頬が更に赤くなったように見える。

「このまま、襲ってしまおうか」

半分程の冗談を言うと、名前は本気にしたのか呆然とする。そんな愛らしい反応に笑って、冗談だと告げたら頬を軽くつねられてしまった。

名前を寝台に下ろし、布団を掛けると今にも眠ってしまいそうだった。
せめて寝付くまで側にいようと、寝台に腰を下ろして名前の頭を撫でていると、私の服の袖を軽く握ってきた。

「どうかした?」
「郭嘉は、寝ないの?」
「私はほら、料理や酒の片付けがあるから」

また拗ねた。
何が言いたいかは流石にわかるが、普段素直ではない彼女の口から出るまで待とうと、また頭を撫でた。
照れくさいのか、布団で顔まで隠してしまった名前を見守る。

「あ、あの……さ……」
「ん?」

気付かない振りをして、名前の言葉に耳を傾けた。酔っていても照れが勝ってしまうらしく、少しの間口を噤む。
急かす事もなく、落ち着かせるように、また頭を撫でると、ゆっくりと口を開いた。

「……片付け、明日でも良いから……」
「うん」
「……一緒に寝よ」
「貴女がそういうなら、喜んで」

私の思っていた、彼女の言いたい事は当たっていたようだ。
素直ではない彼女を酔わせてしまうのも悪くは無いと、改めて自分の底意地の悪さを知った。






END

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