小説 | ナノ


▼ 自然体







女性は苦手だと、彼はよく言う。
それは良いんだ。シャイな男性は嫌いじゃないし、いまだに外に出ると手も繋げないのも可愛らしいとは思うし、変に嫉妬もしなくて良い。だけれど納得いかないのが1つ。

「なんで、ロックは私とは話して平気かなぁ……」
「えっ、なんだ、突然」

隣に座ってベースを弾いていたロックの手が止まった。折角、好きな曲を弾いていてもらっていたのに、変に言葉を出さなければ良かった。

「この前の大会だって、女の子相手に緊張気味だったし」
「そりゃあ、怪我させないように気遣うしな」
「そういう優しいとこも好きだけどさー……」

顔を真っ赤にしてそっぽを向かれた。そんなに恥ずかしがらなくてもと思ったが、その反応は可愛いので見られて満足だ。

「私、全然女の子らしくない?」
「……もしかして、気にしてるのか?俺が緊張しないから」

何度も何度も頷く。そりゃあ大好きな彼氏に女の子らしくないと言われたら、流石の私も気を付けるというか、もっと意識するだろう。
呆れた様に笑うロックは、ベースを置いて、空いた右手を私の頭に置いた。

「名前だから緊張もしないし、苦手意識も無いし、落ち着くんだ。だいたい、この程度で慌ててたらこの先、手も繋げないだろ」

わしゃわしゃと撫でる手が、嬉しくて心地良い。
身を任せそうになってしまったが、先程の発言で気になるところがある。

「それは、外で手を繋いで良いって事?」
「あー……誰も居ない、なら。まぁ……少しだけ……」

やはりまだ恥ずかしいみたいだ。恋人らしい事が出来るようになるのは、何時になる事やら。






END

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