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▼ 暇潰し





いつも通り、ハザマ大尉と共に彼の秘書として執務をしながら統制機構の諜報部大尉の部屋で過ごしていた。ここにはいろいろな人が来る。部下も上司も同僚も、いろいろだ。
そんな日常の中、今日は普段より忙しくはなかった。それに暇を覚えたのか、ハザマ大尉は椅子に座って退屈そうにしている。

「名前さん、何か面白い事無いですかね?」
「ありませんよ。そろそろお湯が沸けるので、お茶でも淹れましょうか?」
「ええ、ありがとうございます」

ついでにお菓子も用意しておこうと、ティーカップと小綺麗な器を食器棚から出した。ティーポットにお湯を注いでいると、執務室の扉がノックされた。

「失礼します、ハザマ大尉。キサラギ先輩から書類ですよ」

部下とは思えない程軽い挨拶をするマコトに、ハザマ大尉は軽いため息を吐いた。きっと嫌そうな顔をしているんだろうと、背中越しにでも感じる。

「ご苦労様です、ナナヤ少尉。さ、もう下がって良いですよ。とっとと帰ってください」
「んー……あっ!もしかして、今名前がお茶淹れてます?」

小さく舌打ちが聞こえたのは気のせいだろうか。テルミさんが出掛かっているようにも感じる。
そんな中、タイミング悪くお茶を持ってきてしまった自分を恨んだ。

「マコトの分も作ろ……」
「ええ、そうなんです。これから私達は、会話を聞くのも耐えられない程甘い時間を過ごすので、ナナヤ少尉には申し訳ないのですがご馳走するのはまた今度でお願いしますね」
「は?」
「へぇ〜……」

いや、そんな話聞いてないが。マコトも何をニヤニヤしているんだ。
ねぇ?と、嬉しそうに同意を求めるハザマ大尉を少し殴りたくなったが、ここは踏みとどまれ、私。後で何をされるかわからないぞ。

「いや、そんなつもりはまったく……」
「何を照れているんですか?いつもこの時間は二人で過ごしているでしょう。ナナヤ少尉がいるから恥ずかしいのですかねぇ……」
「私、帰りますよ?お邪魔みたいだし」

あぁ、これは完全にハザマ大尉がからかってるな。二人揃ってニヤニヤするのは止めてほしい。こういう時だけは何故か息が合う二人だ。
マコトは、ごゆっくり。と、いかにも楽しそうな顔で部屋から出ていった。
マコトが去った音を確認すると、ハザマさんは書類の術式を解除しつつ、何事も無かったかのようにさっき出した紅茶を飲み始めた。

「……ハザマ大尉」
「はい?」
「マコト相手に冗談は止めましょう」
「では、本当にしますか?」
「それも止めましょう」
「それは残念」




END

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