納得するまで説明しようか
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今日のケントさんは
なぜかいつもより口数が少ない。

もともと口数が多い方ではないけれど
今日は特別少ない。

私たちは今、ケントさんの部屋にいる。

ケントさんは研究やレポートで忙しい
とは言っていなかったので、理由はそれじゃない。


私たちは何をするわけでもなく
お互い本を読んでいる。

三十分前くらいから
本をめくる音だけがこの部屋に響いている。


『ケントさん?』


私は思い切って口を開いた。


ケント「ああ、何だ?」

『私、何かしましたか?』

ケント「急にどうした?
なぜそんな事を聞くんだ?」


ケントさんが何も話さないのは
私のせいかな、なんて思っていた。

別に心当たりがあるわけじゃない。

けど記憶喪失をする前の私とケントさんは
犬猿の仲、のようなものだったから。

私が知らない間に
ケントさんの気に障るような事を
していたかもしれない、と思ったからだ。


『今日のケントさんは
口数が少ないような気がしました。
なので私が何かしたのかと思いまして。』


私は素直に思っていた事を伝えた。


ケント「ああ、すまない。
やはり口数が少なくなっていたか。
しかし原因はマイではない、イッキュウだ。」

『イッキさん…?』


まさかの名前に驚いた。


ケント「ああ、もちろんイッキュウへの不満の
八つ当たりではない。」


そう言うとケントさんは私を抱きしめた。


『け、ケントさん?!』


ケントさんの突然の行動に驚いた。


ケント「イッキュウに言われたのだ。」


…なるほど、やっとわかった。

ケントさんはイッキさんに
ある事を言われた。

今の流れだと
「恋人を抱きしめるのは当たり前」
的な事だろう。

それを実行するタイミングがなくて
ずっと口を開かなかった、という事が。

それがわかって私は安心した。


なんて私が心の中で考えていると。


納得するまで説明しようか


『大丈夫です、もう納得しました。』

ケント「そ、そうか。」

『ケントさんはケントさんですね。』

ケント「マイ、それはどういう意味だ。」





(お題配布元「確かに恋だった」)


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