皆が黒子に甘い


夏、それは過酷な合宿の始まりであった。
誠凛のバスケ部員は熱い日差しの中、練習をする。
いつもとは違う場所で行われる練習は、慣れていない分、余計に体力を消費する。
夏の日差しが確実に体力を奪っていく。
間田は全員の動きを確認しながら、ノートに何かをメモをしていた。
一人一人の練習メニューを考える為だ。
暫く観察し、腕時計で時間を見てから、間田はホイッスルを鳴らした。
その音にバスケ部員は動きを止める。

「はーい、今日の練習はここまで!!夕飯前までクールダウンする事!!」

間田はそう言うと、その場を離れた。
夕飯を作る訳ではない。
あくまで、練習メニューを考えるだけだ。
本当は監督兼マネージャーなので、夕飯を作るはずだった。
だが、どんな料理を作っても、どうしても美味しく作れない。
料理音痴で、更にプロテインを食事に追加するものだから、余計に食事が不味くなってしまう。
なので、間田は渋々食堂に夕飯を任す事にした。
しかし、簡単に引き下がる間田ではなかった。

「こうなったら三倍よ!!」

声に出して言うと、間田は元気よく泊り先である、合宿所に向かった。




「いやぁ、今日の練習もキツかったな」
「過酷だった」
「俺、死んでないよな?」
「(頷き)」
「入院でかなり体力落ちてて、ビビった」
「ビビるって可笑しいしだろっ!だぁほ!!」
「黒子、大丈夫か??」
「駄目です、ふらふらです」
「寄り掛かって良いからな?黒子限定だが」

バスケ部員は、暑い中、クールダウンするために足を冷やしたり、水分補給をしていた。
日影に集まり会話を交わす。
何を思ったのか、火神はヒヤッとしたタオルを、黒子に押し付けた。
冷たい感覚にホッと息をつく。
その表情にバスケ部員は、息を飲んだ。
そんな表情を余り見ないので、バスケ部員はどぎまぎする。

「火神君、ありがとうございます」
「お、おぅ…」

自分の頭をかきながら、火神はそっぽを向いた。
気持ち良さそうに汗を拭きながら、黒子が隣にいる伊月にふらりとよしかかる。
それに伊月の心臓がドキリと音を立てた。

「あ……すみません、先輩」
「いや、別に良いけど、大丈夫なのか?」
「駄目です」
「なら、暫く肩、貸してやるから」

羨望の眼差しを受けながら、いつもクールな伊月は、口元に笑みを作った。

「替わってくんない??」
「駄目」

小金井の申し出を伊月は断ると、寄り掛かる 黒子の頭を軽く撫でる。
他の部員は隙有らば、黒子を狙っていた。
黒子は誠凛バスケ部員にとって、アイドル的存在で、バスケ部員は黒子を皆の物と決めている。
決めてはいるが、黒子の行動次第でいくらでもそれは変化をするため、こうして伊月だけが、役得になる時もあるのだ。

ひぐらしの鳴く中、バスケ部員はしっかりとクールダウンすると、泊まり掛けの合宿所に向かった。





「さっ!お腹いっぱい食べてね!!」

皿に盛られた食事を見て、バスケ部員は驚いた。
皿に盛られたおかずの量は凄く、また、ご飯も山盛りだ。

「だそうだ、食え」
「体力も必要でしょ?三杯は食べてね!」
「さ、三杯!?だそうだ、食うぞ!!」

先程から、間田の言葉に日向は動揺しながらも、頷き賛同した。
自分でも食べられるかどうかも分からないのに。
部員はと言えば、自棄になったのか食事をし出した。
黒子も手を合わせて「いただきます」と言うと、おかずに箸をのばした。
日向はそれを見て、夏バテにはなっていないようだと、安心して食事を始める。
これからが地獄だと思いながら、バスケ部員は苦行と替わらない夕飯を平らげていった。
暫くすると、2年生は何とか胃に大量の食べ物を詰め込んで立ち上がりだした。
他の部員も食べ終わる中、黒子が一人、ポツリと箸を置きそうになりつつも、ふるふると震えていた。

「黒子?」
「ギブアップは駄目ですか?」
「あ〜……駄目とは、言わないが…」
「たくっ!!貸せ!!」

一番最初に食べ終えた大食いの火神は黒子の茶碗を取ると、自分の箸でご飯を食べ始める。
それを見ていた他の部員も、黒子がいるテーブルに集まりだす。

「あ、火神君!?」
「今回だけだぞ?黒子」

そう言うと、日向は適当に盛られたおかずを、一つ摘まむと口に入れて食道を出ていった。

「食べもん粗末には出来ないしな」
「黒子の為に!!」
「(頷き)」
「大丈夫か?ちゃんと食ってやるから、安心しろ!」
「黒子を食うのは止めてほしいっす」

好きな事を言いつつも、二年生は黒子が食べれなかったおかずを、一つずつ食べていく。
そして日向の後を追うように、食堂を出ていった。
食堂には火神と黒子だけになった。
殆どを部員が食べてくれたので、おかずが少なくなっている。
黒子は皆に感謝をしながら、全てを食べ終えた。

「火神君、ありがとうございます」
「あ?まぁ、なんつぅか、ありがたく貰っておいてやる。つか、センパイにも感謝しろよ」

火神は黒子の頭を優しく撫でて、食堂から出ていった。
一人残された黒子は、後で先輩にお礼に行こうと思いながら、食器を片付けた。



一方、先に部屋に行った二年生達は、違う事で頭を悩ましていた。

「どうすんだよ、風呂」
「ヤッベー!!俺、大丈夫かな!」
「冷静になるのは無理だ」
「(頷き)」
「裸の付き合いか!!良いじゃないか!!」
「お前が言うと、卑猥に聞こえるんだが……?」
「気のせいだ!!黒子には俺が」
「黙れ!!」

青春真っ盛りの少年は、アイドル黒子との風呂をどうするか、頭を悩ましていた。


fin
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後書き

夏合宿の原作から、ぞうてい(漢字分からない)ネタです。
リコちゃんは普通にお料理下手でも、火神君が教えたら、ちゃんと出来るので、問題はプロテインかと(笑)
で、夏合宿の二日目ぐらいの合宿夕飯でした。
黒子が余り喋っていませんが、黒子が誰かに甘えるシチュは萌えすぎですな!!hshs(*´∇`*)
木吉が黒子狙いだったり、伊月がドキドキだったり、水戸部が喋らなかったりwww
合宿の風呂は危険ですな、誠凛の皆が。
うわ!!書きたいwww
次は沢山黒子に喋らせたいです。
え!?次あるの!?(強制終了)

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