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くっそー……昨日はとんだ失態だったわ。
黄瀬の泣き顔を写真に収めるどころか、まさかあたしが黄瀬の前で泣き顔を晒してしまうだなんて。末代までの恥よ。

それもこれも、緑間がろくでもないアイデアを出してくれたせいよ。
(八つ当たり?そんなことないわよ)

……ともかく。
DVDで泣かそう作戦はまさかの黄瀬の寝落ちであえなく失敗。
次なる作戦を早急に考えなければいけない。

うーん……もうなりふり構わない感じになってきてるしなー。
これが「目的のためには手段を選ばない」ってやつかしら。

なんて、くだらないことを考えながら歩いてた朝の通学路。
確かに、考えに集中してて注意力が散漫になっていたのは認めよう。
だからって、

「ぅおっ?!」

急に足を何かに引っ掛けられたあたしは、思いっきりバランスを崩してつんのめる。
幸い転びはしなかったものの、この体勢はオトメ的にちょっとばかりまずい、気がする。

「なんだよ時枝。黒のボーダーとかつまんねー。もっと色気のあるのはいて来いよ」

「うっさい青峰!スカートの中はオトメの秘密なのよ!」

「え、ワリ。聞こえなかったわ。どこにオトメがいるって?」

からからと笑うガングロ……もとい、青峰。
こいつもバスケ部員であり、ついでに何の因果かクラスメイトでもあったりする。
(ああ、嘆かわしい)

「……決めた。もうあんたには宿題写させてやんないからね」

今までバスケ部のよしみっつーか、コイツが補習とかになって試合に出れなくなったら困るから写させてやってたけど、もう知るもんか。
ヤキ入れられるのはあたしじゃなくて青峰だし。うん。

「は?ちょっと待てよ時枝!オレ今日英語当たるんだよ!」

「知ーらない。やってないあんたが悪いんでしょーが。緑間にでも頼めば?」

っていうか、やっぱりコイツ。予習も宿題もしてなかったのか……まあ、してきた方が怖いけどさ。
(真夏に吹雪が吹き荒れるわ)

「やだよアイツに借り作ったらまたネチネチ嫌味言われるんだもんよ。あの陰険メガネ」

そーいやあ、こないだあたしと喧嘩したときは緑間から数学のノート借りてたんだっけ。
そのときのことを思い出したのか、青峰は心底嫌そうな顔をした。

しかし、やがて彼の中でいろいろ議論があったんだろう。
ニヤリとイイ笑顔を浮かべた。

「よし、それならこうしようぜ。お前、黄瀬泣かしてーんだろ?なら、そのアイデア提供してやるってのはどーよ?」

「は?緑間のアイデアでもダメだったのに、あんたのアイデアで泣かせると思ってんの?」

「はっ。緑間とオレ、どっちの方が黄瀬いびってると思ってんだよ」

……自信満々言うことかソレは。
まあ、しかし、青峰の言うことも尤もである。
黄瀬いびりに関しては緑間よりも青峰の方が適任かもしんない。

「……よーし、ノった!でも青峰、これで泣かせらんなかったら今後あたしのノートは拝めないと思え」

「ばーか、誰に言ってんだよ」

交渉成立。
青峰曰く、その作戦は今日はムリらしい。
ならばいつかと聞いたところ、明日ならと自信満々のたまった。
明日ねぇ……何かあったかしら。


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