1


「岩村サーン!おはよう!」


朝練に向かう道すがら。
前方に、見知った後ろ姿を発見した。
オレが話しかけると、途端に眉をひそめて嫌そうな顔をする彼女。
あ、やっばー。なんかそんな嫌そうにされるとゾクゾクするかも。

呼びかけた彼女……1年3組、出席番号3番。岩村夏希。

岩村サンはオレの入ってるバスケ部キャプテンの妹だ。
第一印象を一言で言うならば、強烈。この一単語に集約されていると思う。
なんせ入学式、校長の話の途中に「だるい」と、いきなりエスケープした事件は記憶に新しい。
(当然その後呼び出しを受けていたけど、それで大人しくなるような彼女でもない)

授業はサボる、出席しても居眠り、課題の半分は白紙提出……入学してまだ二ヶ月ほどだというのに、この調子だ。
(さすがにオレもそこまではできない)
(それでも聞いた話によれば、岩村サンは首席入学で本来なら新入生代表として挨拶をするはずだったっていうんだから意味がわからない。ちなみに挨拶しなかった理由は「面倒」だからだそうだ)

そんな岩村サンの最大とも言える特徴は、兄……つまり、バスケ部キャプテンの岩村先輩をすっげー嫌ってるってこと。
そんでもって、バスケ部も嫌いらしい。
もちろん、それはオレも例外ではなく。

「岩村サン、おはようってば!」

「……あのな、津川。私に話し掛けるなって言うのはこれが初めてじゃないはずだけど?」

「えー、そーだっけ?まあ、いいじゃんクラスメイトだしさ!」

まあ、ぶっちゃけ毎回言われてるからさすがに覚えてるけどさ。
なんかもったいねーじゃん。せっかくクラス一緒で共通点だってあるのに、話さないとかさ。
(オレだってキャプテンに怒られた次の日とかは愚痴りたいときだってあるしさー)

しかし彼女は盛大にため息をつくと、声の調子を荒くして言った。

「お前、脳みそ入ってるわけ?ただでさえこの休み春日が来ていらいらしてんだから、これ以上いらいらさせんじゃねーよ!」

いいなっ?!と、言うが早いか、あっという間にオレの前から走り去って行った。
あーあ、残念。

っていうか、さっき春日先輩がどうのって言っていたような……?


「あー、やっべ!朝練そろそろ始まるじゃん!」

GW明けの朝練に寝坊したときはキャプテンにしこたま怒られた。まだ日がそんなに開いてないうちにまた遅刻したらぜってー怒られるじゃん!

とりあえずさっきの疑問は頭の片隅に置いておいて、オレは学校目指してダッシュした。


[prev] [next#]




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -