1 俺には二つ下の妹がいる。 名前は夏希。 兄の贔屓目から見ても、まあ、可愛い方……なのだろう。 ただし……黙っていれば、だが。 「はっ?!なんで兄貴今日家にいんの?しかも春日連れて来てるとかマジありえんし!」 ……この調子で、毎日毎日目の敵にされている。 が、俺としてはそんなことをされる心当たりが全くないので、夏希の扱いには手を焼いている。 なにせ家の中でも徹底的に俺と顔を合わせないように食事などは時間をずらしてくるし、たまに顔を合わせたかと思えば舌打ちが飛んでくる。 学校などで会った日にはそれこそ絶望的な顔をされる始末。何故だ。 「夏希ちゃん、相変わらずだね〜」 ケラケラと目の前にいる人物が、さもおかしそうに笑い声をあげた。 こいつは春日。 同級生であり、バスケ部の副主将という信頼すべき人物……ではあるが、最近はどうにも素直にそういう気にはなれない。 と、いうのも。 数日前、校内で夏希とばったり出くわした事件があった。 同じ学校に通っているのだから、それはまあ、いい。あいつが問題を起こすのも(よくはないが)いつものことだ。 問題はその後だ。 あのとき、この春日もたまたま(今となってはたまたまというのも怪しいが)同席したのだが、俺の隙をついて夏希が逃げ出したあと。 何を思ったか、春日は夏希を追ったらしい。 そしてその日の放課後。 春日が俺に告げたのは、何がどういうわけなのか、夏希を気に入っているという事実。馬鹿な。 あれからというもの、どうも妙に落ち着かない。 焦燥感、というものか。 落ち着かない一週間が終わり、今日はようやく週末である。 部活自体は午前中で終わったが、そろそろ夏のIHに向けての方向性を決めなければならない。 ……と、いうわけで練習後に春日とうちまでやってきたわけだが。 そういえば場所を決めるときに春日は「オレの家、今週土日は使えんよー」と、のたまったのを思い出した。 まさかとは思いたくないが、ふと勘繰ってしまう。 学校が使えればそれがよかったのだが、生憎とこの土日は改修工事だとかで立入禁止。 こうも重なると、何かの陰謀ではないかとすら思いたくもなる。 |