彼らの物語


心配したんだ。
あんたのこと。

倒れてるあんたを見たとき、心臓が止まるかと思った。
おれの腕の中で小さく震えるあんたが、消えちまいそうで怖かった。

おれは……手当も満足にできなくて、あんたを運んでやることすらできなくて。
そんな不甲斐ない自分に、苛々していた。

――もっと、力が欲しい。



「なあ」

「……」

「なあってば、マーロ」

「…………」

「おい、聞いてんのかよ」

「……うるさいっ!聞こえてる!」

しかし怒鳴り付けたところで、アルターのやつはケロリとしたもんだった。

「なんだよ、聞こえてるなら返事しろよな。あ、それともお前、ハラ減ってんだろ?」

「は……?」

全くの見当違いもいいところだ。
しかしアルターは、気にすることなく話を進める。

「そーかそーか、よし、メシ食いに行こうぜ!」

「ちょっと待て、誰も腹が減ってるなんて言ってない!だいたい、お前アレックスのとこに行くんじゃないのかよ?!」

「ん?行くけどよ、ヴィオが心配で、そういえば朝メシ三人前しか食ってねーんだよ。ハラ減って動けねえよ」

三人前も食えば十分だろ……っ!
っていうか、普段どれだけ食ってるんだコイツ。

おれが呆れて言葉を失っているのをどう受け取ったのか(間違いなくおれにとってあまり都合のいいものではないだろう)、アルターは機嫌よく口を開いた。

「よっしゃ、決まりだな!今日はヴィオが帰って来たし、オレが奢ってやるよ!」

「だから、行くとは言ってないだろ!だいたい、おれは今から学院に、」

「今日は何食うかなー。……よし、焼肉食いに行こうぜ!」


――結局。
なし崩しにアルターに連れられて、おれたちは少し遅めの昼食を取るために定食屋へと入ったのだった。
(レポートはもう今日中には仕上がらないだろう)

「何すっかなー……やっぱ肉食いたいよな、肉!おっちゃん、オレ焼肉定食五人前な!あとビール!」

「ぶ……っ!」

五人前ってなんだよ、バケモノなのはこいつの胃袋だろう?!

呆気に取られていると、アルターがお前も早く頼めと急かしてくる。
こいつは、ほんとに……!

「……じゃあ、このシチューのセットを」

「お前そんなんで足りるのかよ?それじゃいつまで経っても力つかねーぜ?だからそんなに細っこい女の子みたいなんだよ」


――多分、そのとき何かがキレたんだと思う。


「マスター、焼肉定食!大盛り一人前!」

気が付けばおれの前に。
およそ昼飯とは思えない量の肉が運ばれ、翌日まで胃がもたれていたのは……思い出したくもない出来事だ。



――おれは、おれの方法で。
魔法で、あんたを守るから。





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悪友な彼らが大好きです@@


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