11.19

「ねー、アラクネ。行かないとは思うんだけど、一応聞くわ。週末の合コン、1人足りないんだけど」

「悪いね、遠慮しとくよ」

「だと思った。じゃー詩和に声かけよっかな。あの子呼ぶと色んな意味で大変なんだけど」

「ああ……まあ、確かにそうだろうね」

以前の打ち上げの様子を思いだし、苦笑が漏れる。
それが味覚的な意味なのか、反応的な意味なのかは推して知るべし。
多分、両方。
ま、詩和の扱いにかけてはミモリの右に出る者はないわけだし、大丈夫だろう。

じゃーね、と手を振って立ち去るピンクを見送って、口をついて出たのは深い深いため息一つ。
忘れようと思ったことなんて、数えきれないくらいあった。
そういった場所に出掛けたことも、ないではなかった。

それでも、忘れられないのはあたしの業か。
愛らしい顔をして毒を振り撒くあの蝶に、あたしはまだ、囚われているんだ。

忘れることなんて出来やしない。
あの子を殺した罪は、永遠に消えやしないのに。

なのに、どうして。
たった一度会っただけの彼女が、こんなにも気になるのだろう。

あれから忘れることのできない面差し。
どこが似ているというわけでもないのに、どうして。どうして、忘れることができないのだろう。

きっと純真だろう彼女は、あたしなんかに関わっちゃいけないのに。
あれから何度も夢に現れる、あの子と彼女。
その印象は最早ほとんど重なってしまい、どちらがどちらの輪郭だったかも朧気で、固まりそうになった途端にそのどちらもが霧散する。

「ねぇ……あんたはあたしを恨んでる?それとも、こんなあたしを見て嘲笑ってる方かしら?……ねぇ、  」

答えるはずのない名前を虚空に呼んだけれど、やっぱり、返事が返ってくることはなかった。

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