09.01

正直、こいつは苦手だ。

「バイト、何時までなわけ?」

「っだー!今日は夕方までだよまだまだ終わらねーっつか今から忙しいんだから邪魔すんな!」

「ねーってば。ボク、何時に聞いてるんだってば。ちゃんと答えてよ」

「うっせーよ龍卉!夕方だっつってるだろ!つかお前来るの明日じゃなかったのかよ」

「マスターの用事が早く終わったから来てあげたんだけど」

「お前なー……、」

「おい千速!サボってねーで3番テーブルに生追加とヤキソバな!」

「はい今すぐ!!……ってことでマジ忙しいからマジ今は勘弁してくれ……多分3時くらいには一旦ヒマになって相手してやれるから」

「千速!!」

「はい今行きます!!」

店主に怒鳴られカウンターへ向かう。
荒っぽく手渡された生ビールとヤキソバを受け取りながらちらりと龍卉の方を見れば、むすっとふて腐れた顔。
そりゃあ、オレだってわざわざホウエンから遊びに来た奴を邪険になんてしたくはねーけど、実際問題、真夏のシーズン中の海の家は死ぬほど忙しい。
事実、さっきから引っ切りなしに次々とお客が入ってくる。
ふい、と店から出て行った龍卉を見ながら、内心ため息をついた。




「遅い」

「オレに言うなよ……文句はこの砂浜にいる客全員に言ってくれ」

「そいつら代表して千速に言ってんじゃん」

時刻は4時。
あれから予想以上に客が入り、約束の時刻を大幅にオーバーしてしまった。
さすがに悪かったと反省し、詫び代わりにかき氷を持って行けば、ふて腐れたまましゃくしゃくと口に運ぶ。
何だかんだ、おとなしくかき氷を口に運ぶ姿は年相応なんだとは思う。

「千速さー。そんなカイショウナシで龍妃サンによく愛想尽かされないよね。龍妃サンまじ女神じゃないの」

……この憎まれ口さえなければ、だが。

「うるせー甲斐性なし言うな」

わしゃわしゃと頭を撫でれば、やめてよ、と抗議の声が飛んできた。

「じゃあ、オレそろそろバイト戻るから。明日には皆でジョウト案内してやっから楽しみにしとけよ」

「千速のセンスだからね。あんまり期待はしてないけど、まあ、楽しみにしててあげる」

ゴチソーサマ、と、カップをオレに押し付けると、フライゴンの姿に戻り、大空へと飛び立つ。

「くっそ、龍卉のやろー……明日ぜってー楽しかったって言わせてやるからな」

ぐしゃり、とカップを握り潰し、明日のジョウト観光のプランを練り直しながら、バイトへと戻る。

くそ生意気だし、口は悪いし、はっきり言って苦手だが……


「まあ、それでも。憎めねーんだよなぁ」

弟がいたら多分あんな感じだろうな……なんて思い、一人、苦笑した。

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