私は貴方の本当が見たい。
不破くんと一番仲良しで、竹谷くんと久々知くんと尾浜くんの5人と仲良くしている貴方の本当が知りたい。
変装の下の素顔、不破くんには特別に優しい理由、影で努力する貴方の弱さ、それから、私を拒否する理由も、全て知りたい。
だけど私にそれを知る術はない。鉢屋くんとは仲良くないし、避けられている気がするし、何よりも話しかける勇気なんて持ち合わせてはいない。だから不破くんになら聞けるかなあと思いいたり、不破くんに訪ねることにする。
不破くんか鉢屋くんかわからないけれど、木の下で本を読んでいる姿を見つける。
「ねえねえ」
私が声をかけると、本から目を離し丸い目を細めて笑った。
「どうしたんだい名字さん」
「不破くん?」
「うん」
「鉢屋くんって私のこと嫌いかどうか知ってる?」
「三郎が名字さんを?聞いたことはないけどなあ」
「そうなの?」
「うん」
「じゃあ私も鉢屋くんと仲良くしたいって言ったら迷惑かな?」
「まさか、三郎なら喜ぶと思うよ」
「本当に?」
「勿論さ」
「じゃあ不破くんと特別に仲が良いのはどうして?」
「うーん、どうしてだろう。三郎が僕に気を使ってるんじゃないかな」
「素顔はどんな感じ?」
「さあ、僕も見たことないからなあ」
「じゃあ鉢屋くんの弱さはどんなもの?」
「うーん、三郎の弱さかあ。わからないなあ」
「そっか。なら鉢屋くんはいつから私の前に不破くんとして現れるようになったの?」
「あれ、いつからバレてた?」
「私が不破くん?って聞いたときの返答から」
「なんだ。最初からじゃないか。私のことをどう思ってるか聞けると思ったんだが、逆にたくさん聞かれたな」
「本当は気付いていたくせに」
「何が?」
鉢屋くんはまとっていた不破くんのオーラを消して、いつもの鉢屋くんのようにニヤリと笑った。私は少しだけ悔しくなる。
「私が鉢屋くんを好きだってこと」
「まさか。その逆さ。嫌われてると思っていたから、君を避けていたんだ」
「どうして?」
「傷付きたくないからさ」
「意地悪」
「なにが?」
くつくつと喉で笑う鉢屋くんを睨み付ける。
「私はどうしたらいいのよ」
睨み付けたまま言えば、鉢屋くんは私の髪の毛を一房手で掬った。
「そのまま私を好きでい続けてくれ。私はその何倍の好きで返してくから」
「本当?」
「勿論さ」
全ての言動が嘘くさく見えてしかたがない。
私は貴方の本当が見たいし知りたい。だけれど全て嘘だったとしても、それが貴方の口から発せられた言葉なら本当になる。
貴方の強さ、弱さ、素顔すら見れなくても、知れなくても、私は貴方が大好きです。
I want to understand all of you.
(一房掬った髪の毛に鉢屋くんは口づけた。彼はとても狡い。)
end
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