叶わない事だとわかってはいる。けれどそれをやらなくちゃ後悔する気がした。
某動画サイトの歌ってみたカテゴリーにいる伊作が好きだ。伊作さんの歌ってみた歴は3年を過ぎている。私が知ったのは1年半くらい前で、面白いくらいずぶずぶはまった。
歌を聞くのも歌うのも大好きだから、ぼかろPさんやぼーかろいどはもう5年以上前から好きだった。
それがこんなにも一人の歌い手さんにはまるなんて思ってもいなくて、生放送を聞いたりライブに行ったり、CDを出したときには握手会にも行ったほど好きだ。ついったーは当然フォローしている。
伊作さんはちょっと不運なのか、よくライブ前に体調を崩したり生放送をすれば放送事故が起きたりしているけど物腰は柔らかく人気歌い手街道まっしぐらだった。
私のちっぽけな存在は、伊作さんに気づいてもらいたくて必死になっている。だけどついったーでリプを送る勇気はなくて、ライブなどの時だけ送るだけだし、ファンレターを書く程度だ。気付いてもらえるはずもない。そんな私が見つけた浅はかな考えは、自分も歌い手になること。歌い手になって伊作さんに見つけてもらうのだ。そしてついったーでフォローしてもらう。
もちろん歌い手になるだけなら簡単だ。歌ってみた動画をアップさえすればそれでなれるのだ。しかし私は人気歌い手の方に気付いてもらえる歌い手になりたい。
言っておくがどこかの漫画やアニメや小説のようなヒロイン体質ではない。歌も下手ではないか上手でもない、カラオケでまあ聞ける程度のレベルしかないし、機械音痴なのでミックスも難しいことはわからないでいる。もちろんこんなこと誰かに言えるはずもない。お前が歌い手かよ、プギャーが落ちである。身の丈にあわないのは知っている。わかっている。けれど公開はしたくないのだ。
歌ってみたをアップしてわかったこともある。むしろ思い知らされた感じだ。閲覧者がいっこうに増えない。しかも二桁レベルである。
いろいろ未熟な動画であるためそれに不満はない。しかし閲覧が伸びなければもちろん気付いてもらうことは不可能だ。
浅ましい、浅はかな考えの私だけれど、私にだってプライドはあるのだ。いつだって私には誇れるものが欲しかった。少しでいいから秀でているものが欲しかった。それを人は才能と呼ぶから私は才能が欲しかった。なんにも持たない私にはそれがどんなに羨ましかったか。惨めな自分が大嫌いで、そんな私をかわいそうだと思うから夢をたくさん諦めてきた。けれどこればかりはだめなのだ。
才能は一瞬の輝きではなくそれを継続することができたものだと見たことがある。だから私は証明して見せたい。私にも才能があるのだと、自分自身に希望も期待も見出だせない私自身に証明してみせたいのだ。
音痴でも、機械音痴でも、例えばバンカーからのスタートでも、歌うことが大好きだから。理由はどうあれ、私自身のために歌いたいのだ。
きっかけをくれた伊作さんにいつか追い付けるように。気付いてもらえるように。
end
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