「いけいけどんどーん!」
今日も騒がしい彼、七松小平太は体育委員会を引き連れて笑っている。今日はマラソンでもするのだろうかと教室からぼうっと眺める。
「今日はバレーをするぞ」
ああ、殺人バレーの方をやるんですか、ご愁傷様です。委員会下級生諸君、可哀想だけど頑張ってくれたまえ。心の中で静かに合掌しておく。
「よし行くぞ、いけいけどんどんアターック」
どかっとバレーボールが鈍い音をたてて4年生の滝夜叉丸君に当たる。というよりも1年生の金吾君を庇うように受けた形だ。
「先輩無理ですー」
「なに!?大丈夫だ、次行くぞー」
いやいや、絶対大丈夫じゃないよ、可哀想に。既に皆満身創痍だ。
「お前らへばるの早いぞー。よーし、待ってろ!」
七松はそう言って下級生達を残し何処かに走っていく。皆のために水でも汲んでくるのだろうか。
「名前ー!」
すると某暴君の声が響く。
「名前も一緒にバレーしないかー」
廊下でめっちゃ呼んでるよ。早く名前ちゃん返事してあげてよ。
「名前ー、此処にいるんだろ?入るぞー」
ガラリと教室の戸が開く。振り返ると暴君が満面の笑みで笑っている。ああ、名前って私だ。
「えーと、なんでしょう」
「一緒にバレーやらないか」
「なんで私?」
「毎日見てただろう?体育委員に入ればいいのに」
七松の笑顔はなんの曇りもない。
「見てたこと知ってたの?」
「勿論だぞ。私も毎日名前を見ていたからな」
You look happy.
いつもいつも楽しそうな七松君が羨ましくて憧れていた。私には体育委員会に入る体力も正直根性もないけど、大好きなんだ。泥や汗にまみれながら笑う七松君の隣で笑いたい。でも、とりあえず。
「バレーはちょっと怖いから、得点係するね」
「ああ、頼んだぞ。いけいけどんどーん」
You look happy.
毎日私を見ている視線に気付いたとき、とても綺麗に静かに笑っている彼女は幸せそうで、きっと名前の隣で笑えたらいつも以上に笑えて暖かくて幸せになれる気がしたんだ。
名前の手を引いて教室を後にする。ああ、小さい手だ。振り返れば楽しそうに幸せそうに笑っている。私は今、いつも以上に幸せだ。名前もそうだろう?
end
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