あんみつ、ぜんざい、だんご、何を食べよう。よく行く甘味屋さんの娘さんと仲良くなったのはいつからだったか。そんなことを頭の片隅で考えつつ、目の前のお品書き見て迷う。

「あ、不破さんいらっしゃい。今日はぜんざいがお勧めですよ」

「あ、じゃあ、それをください」
「はい。しょうしょうお待ちくださいね」

初めて話したのも確かこんな感じだった。僕が何を食べるか迷っていて、お勧めを教えてもらったのだ。最初は純粋に甘味のために来ていたのだけれど、娘さんと今よりほんの少しでいいから仲良くなりたくて、ほぼ週一の割合で通っている。いつも笑っていて、店主である父上の助けをよくしている。気立てのいい人で、年は僕と同じくらい。勿論向こうは僕が忍たまであることを知らないし、名前だって偶然、知ったにすぎない。

「お待たせしました。ぜんざいです」
「ありがとうございます」
娘さんによって運ばれてきたぜんざいからふわりと香る甘い匂いにふと笑みがもれる。

「あ、あとこれ、父がよく来てくださるからって、おまけです」
「いいんですか?」
「はい。よかったら召し上がってください」

だんごを1本もらえて余計に嬉しくなる。

「いただきます」

ぜんざいを一口含むと、甘すぎず上品で、それでいて親しみやすい落ち着く味に、ここのお店を知れてよかったなと思う。

「どうですか?」

覗きこまれるような形で聞かれて、僕は美味しいです。と答える。

「甘すぎなくて落ち着きますね」
「父が喜びます」

ふわりと笑った彼女の表情に、また来週も来ようと思った。いつかもっと仲良くなれる日が来るだろうか。とりあえず今は、この距離がちょうどいい。



Distance
(いつかがいつになるかなんてわからないけどね。)



End


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