人を信じるのと人を好きになるのは別のものだと思う。私は伊作を好きだけど、信じてるかと問われれば信じてはいないと答えるだろう。信じたいのに信じられないから辛いのだ。実際、伊作もそういう人間なのだと思う。人当たりが良くいつも笑っている。個性的な友達に囲まれてるけど、それに負けないくらいしっかりと自分を確立している。そんな伊作の闇を見たい。私は伊作の近くにいるわけではないけれど、同じ委員会で活動している者同士、よき話はする。面倒見が良く不運にもへこたれない伊作の強さと弱さが知りたい。

「くのたまの授業なの。名前は出さないし、その人だと特定できるような事は決して言わないわ。その人についてレポートをまとめるの。伊作しか頼める男友達がいないから、よかったらお願いできない?」

嘘をついた。こんな授業はないけれど、そうでもしなきゃ伊作を知ることができない気がした。

「うーん、僕でよければいいけど」
「ありがとう。じゃあ質問に答えてね。なるべく正直に」
「うん」
「趣味は?」
「趣味?うーん、薬を煎じることかな」
「最近見た夢は?」
「こへがいけどんだった夢かな」
「最後に泣いたのはいつ?」
「先週の実習中」
「悩みごとは?」
「皆が平気で怪我をしてくることかな」
「それだと伊作だと分かりやすいわ。他は?」
「他?うーん、不運が、」
「それもわかるわ」
「やっぱり?じゃあ、ないや」
「信じてる人はいる?」
「うん。君も含めて6年の面子と、委員会の子達かな。後は先生と、」
「嘘でしょ?」
「え?」
「嘘でしょう?」
「嘘じゃないよ。本当」
「じゃあ好きな人は?」
「嫌いな人はいないよ」
「嘘はつかないで」
「全部本当だって」

伊作の笑顔はどこまでもいつも通りで、私にはそれが理解できない。

「これ授業で使うから本当のこと言ってくれないと困るよ。そりゃ私のこと信じれないかもしれないけど、あ、勿論私のことも聞いてくれたら話すわ」
「名前落ち着いて」
「落ち着いてるわ」
「ほら深呼吸して」

納得のいかない
まま私は深呼吸をする。どういう事だろう。伊作は私と違うと言うの?


「ねえ名前、誰かを信じてないのは君だけとはいわないけど、それで悩んでるのは僕知ってるよ。だから無理しなくていいんだよ。君は一人じゃないから」

嘘、嘘よ。伊作は何を言ってるの?

「ずっと前から知ってたよ。もう、泣いてもいいし、強がらなくてもいいんだよ」

嫌、違う、違うの。私はそんな人間じゃない。そんな綺麗事が聞きたい訳じゃない。

「名前、もう、頑張らなくてもいいんだよ」

嫌、違う、こんなのは違う。パキパキと剥がれていくように私が見える。止めて、怖い、見たくない。誰も私に触れないで。

「名前、泣いてるの?」
「泣いてない」

膝をたてて顔を埋める。もう何も要らない。考えたくない。闇があるのは私だけ?

「僕だって落ち込むよ。名前は誰より優しいんだね。大丈夫。君は一人じゃないよ。僕がいる」
「嘘つき」
「そのうちわかるよ」
「わからない」
「幸いここは医務室で、誰もいないから、泣いても怒ってもいいよ。もう我慢しなくていいよ」

私の脳みそはきっと壊れた。もう何もわからない。飽和状態だ。悲しくて淋しくて辛くて痛くて、だけど泣いたのではなく、飽和状態なので体の表面に水滴が出てきただけ。





(泣いたら心は元通り)



end
いつも以上にわけわかめですね。
すみません。



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