おじさんはとても狡いよ。狡猾で要心深い。簡単に人を信じないものなんだ。君は今、世界を此処しか知らないから、笑って大丈夫だよなんて言うけれど、本当に心配。正直、尊奈門とか狙ってそうで怖いしさ、きっと伊作君を見たら格好よいし年も近いしとられちゃうかもしれない。そうなったらどうしよう。

「何をそんなに心配してるの?大丈夫だよ。絶対だよ」

いやいや、おじさん絶対なんて言葉信じないからね。こんなにも綺麗な子。きっとこんな醜いおじさんなんかあっという間に嫌いになっちゃうよ。

「私にとっては雑渡さんが全てなんだよ」

それが全てじゃなくなる時が怖いんだよ。この手はとても汚くて、君の手を掴むのもためらって、いつかきっとそんな自分が嫌になって手放してしまうの。後悔なんてしたくないけど、36年間も自分であり続けたのだ。まだ15、6の年端もいかぬ女の子とは違う。

「雑渡さんはいつもそう。大事なことを話してくれないの。」

だってね、君がいなくなるなんて口に出したら諦めがつかないかもしれない。

「私は世界を知っているよ。忍術学園のいさっくんもね、尊ちゃんもね、全部知っているよ。だけど雑渡さんが一番だよ」

一生懸命話さないで。信じたくなるでしょ。そんな大きな目で見ないで。心までのぞかれそう。そんな小さな体で抱き締めないで。抱き締め返したら君を壊してしまいそう。

「いい加減に私とお話ししてよ!雑渡さん嫌いになっちゃうよ!」
「ああ、それは嫌だね」
「やっと話してくれた」

部屋で二人きり、君と向かい合って座って君の将来を案じだよ。その隣に自分がいないのは明白で、その事実は悲しくて、だけどその未来の君が笑ってればいいなんて、たくさんの命を奪ってきたこんなおじさんが願うなんて君は思ってないだろう?いつか終わるこの日々が、今は少しでも長く続けばいい。無邪気な君を見つめるこの気持ちに名前をあえてつけないのは君のため、最終的には巡りめぐって自分のため。だからね、

「今はまだ隣にいてね」
「ずっと一緒にいるって言ってるでしょ」

おじさんはとても狡い。君の言葉を信じれないけど、願い続ける。



I wish
(叶わなくてもただ祈り願い懇願し続けるのだ。)



end
書いてるうちに某忍者漫画の先生でもいいなって思った(´`)


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