暴君と呼ばれている。私は加減というものを上手く扱えない。感情が高ぶると止まらなくて、自分でも一体何をしているか解らなくなる。今もそうだ。

「なあ、名前、私の事が嫌いか?」
「好きだよ」
「じゃあなんでいさっくんと話してたんだ?」
「怪我をしたから、それで」
「私のとこには来てくれないのか、私だって心配なんだぞ、いさっくんよりずっとお前を見ているのに、」
「もう、やめて、」

蚊の鳴くような小さくか細い声が失った理性を連れ戻してくる。やっと自分のしたことに気付いたときには私の手によってお前はぼろぼろになっている。ひどく赤い頬、切れた唇、腫れた目、震える体、それらを目の当たりにして後悔をする。まただ。何度も何度も、こんなことを繰り返してしまう。

「ごめ、ごめん、ごめん、私!」

名前の体を抱き締める。小さくて細い体は私の背中に腕を回して大丈夫だよと言う。

「こへ、ごめんね、私これからちゃんとこへのとこに行くから、だから、泣かないで」

私が悪いと言うのにお前は私の心配をする。細い肩に顔を埋めて、ごめんと繰り返す私を赦す。なあ、私はどうしても不安なんだ。お前がどこか違う場所に行ってしまいそうで、怖いんだ。自分の想いが、束縛してる事実が、お前を苦しめているのに手放せないのが。

「名前、本当にごめんな、痛かったよな」
「いいの。こへが私を思ってくれてるのはわかるから。だから、こへ、安心していいよ。私はこへ以外の奴なんて興味ないからね」
「ありがとう」

泣きながら私を抱き締めるお前の腕をつかんで、涙で濡れた唇に口付ける。鉄の味を舐めとり、嗚咽で上手くできない呼吸を重ね合わせる。
お前の全て、私の目の届く範囲で居て欲しい。出来ないのなら全て私と一つになればいい。淋しい。お前と出会って、私は淋しい。

暴君と呼ばれといる。だけどお前は私をきちんと一人の人間として私の全部を見てくれる。暴君はお前の前ではひどく弱い。痛い思いをさせて、こんなに頼りない私で、

「ごめんな」



ぬいぐるみ
(暴君はひどく弱い。利己主義の元に力を振りかざし、お気に入りを捕られないように虚勢を張るの)



end
→私の中でこへはDVしそう。七香ちゃんに言ったらヒロインは体がもたないよって言われた。よく考えたらそうだなって思った。



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