雑渡昆奈門
「ハロウィンねー」
おじさんはちょっとわかんないかな。興味なさそうにこたえた雑渡さんは、笑って私の頭を撫でた。
「ガキ扱いしないでください」
「あらら、機嫌悪いねー」
別に機嫌が悪いわけじゃない。年齢の差だって気にしない。だけど私は行事が好きだし、ハロウィンも例外じゃない。だけど雑渡さんと私のこの温度差が淋しいし悔しいのだ。
「じゃあそんな悪い子にはイタズラしちゃおうなー」
「これ、お菓子あげますから、私はイタズラされません」
「あれ、そういうものだっけ?」
残念だなー。でもありがと。手作りのカップケーキ?美味しそうだね。今食べてもいい?一緒に食べよう。ほら機嫌直して、お菓子ならこっちにたくさん用意してあるから。ハロウィン好きそうだなーって。ちゃんとわかってたよ、馬鹿だね、ふてくされる事ないでしょ。雑渡さんはまた私の頭を撫でる。饒舌になるときは私の機嫌が悪いときだけだとわかっているから、ほだされて本当に用意してある大量のお菓子を差し出され、私もとうとう笑うのだ。
ハッピーハロウィン!
(大量のお菓子は一ヶ月かけて消費しました)
(それ一万円分だからねー)
(大人って怖い)
伊賀崎孫兵
「見てみて!ジュンコちゃんみたいに可愛い色のお菓子みつけたの!」
「ジュンコの方が可愛い」
ピシャリと撥ね付けられて私はちょっと淋しくなる。でもめげない。
「これとか美味しそうじゃない?」
「微妙」
「じゃあこっちとかどう?」
「毒々しい」
「じゃあこのチョコのやつは?」
「甘ったるそう」
孫兵はなかなか手強いようで私の持ってきたお菓子をことごとく冷めた目をしてはねのける。せっかくハロウィンだからお菓子を用意したのに、これじゃあつまらない。
「孫兵、お菓子嫌い?」
「いや、別に」
「じゃあなんで?」
「名前が僕じゃなくてお菓子ばかり見てるから、少しつまらなかっただけだよ」
「え、なにそれ、ツンデレ?!」
「違うよ。ほら全部もらってあげるから、一緒に食べよう」
小さく微笑んだ孫兵はポケットからクッキーを出した。それが私のためであるのが嬉しくて、孫兵のためのお菓子なんかそっちのけで、私のためのクッキーを夢中で受け取った。
ハッピーハロウィン!
(孫兵、ありがとう)
(別にいいよ。君こそ用意しすぎ)
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