君とゆらゆら
「ねぇ真奈美、おなかすいた?」
朗らかに微笑みかける彼。朝日を浴びたその姿は嘘みたいに綺麗で、本当に天使みたいだ。
(詐欺だわ…)
すっきりとした様子の彼とは正反対に、真奈美はぐったりとシーツに倒れこんだまま顔も上げずにすいてない、と答える。
その体には何も身につけさせてもらえないまま。もう飲まず食わず、一体何時間この状態が続いているだろうか?
「ほんとにー?大丈夫?真奈美死んじゃうよ?」
「……誰のせいよ……」
「えー。俺?」
即答なのね…
力の入らない腰に鞭打って、何とか起き上がる。
ぼんやりとベランダから外を眺めて、とりあえず朝を迎えたことを確認する。金曜の夜、次の日からの三連休に浮かれて帰ってきて、久しぶりにテスト等の準備も無いため同棲している大学生の那智とどこかに出掛けようとワクワクしながら部屋の鍵を開けて、
気が付いたら朝だ。
真奈美は項垂れた。
若いってこういうことを言うのだろうか。
「…那智くん、お話があります」
ベッドの上でシーツを巻き付けた姿で正座する。
那智は「何ー」と椅子に逆座りしながら軽く答える。
「いくらなんでもやりすぎよ」
「セックスを?」「…っそう、だけどっ!そんなハッキリっ」「いまさら。昨夜はアンアンよがってあんなに」「うわああああ」
真っ赤に、これ以上ないくらい真っ赤になってシーツの波に紛れて悶える。
と思ったらキッ!と目を吊り上げて、
「とにかく!体力の差も考えて!金曜の夜くらいゆっくり眠らせて!」
「えー?これでも月火水木禁欲してやってんのに?」
「金土日毎週こんなじゃ死んじゃうわ!」
「知ってる?イった瞬間人間の脳って小さな死を迎えてるって」
「そんな屁理屈!」
屁理屈だって何だっていいさ。
小さく息を吐いて、那智は唇の端を上げる。
「…面倒くせぇな」
椅子を無造作に足で避けて、真奈美の無防備な唇を奪いながら押し倒す。あんまり簡単なものだから、こいつハナから誘ってたんじゃねぇかとすら思う。
しかし当の本人は全力でじたばたしていてうっすら涙目。
(たまんねえよ)
押さえつけて無理矢理奪う感覚に、彼女が彼の担任教師だったころを思い出す。壇上に立つ凛とした彼女を一体何度こんなふうに犯すことを想像しただろうか。
今や完全に手中に落ちた彼女を、溜まりに溜まった欲望に任せて犯しまくる。泣きながらよがる真奈美の姿は目眩がするくらいいやらしい。
那智はとろけそうな極上の笑みを浮かべて囁いた。
「ねぇ、せんせい。死んじゃやだよ?」
まだまだ終わんないからね。
20090613