※ダグナー鬼柳


 かつて、お前らは俺を見て『イカレタ男』だと言ったな。亡者となった俺は、それを今しみじみと実感しているさ。
 あぁ、そんなに怖がらずにこっちへ来いよ、武器もカードもなんにもいらねぇ。ただ、そう、俺の存在を認める寛大な心さえあればいい。愚かでイカレタ亡者をさ、お前の眼球が認める程度に認識してくれりゃあいいのさ。簡単だろう?それくらいなら出来るだろう?トモダチ思いのお前らならさぁ。
 だからそんな顔をすんなって。死ぬ前から俺は……そう、喧嘩腰だったんだ。ヒトに対しても、セカイに対しても。それが俺の生き方で象徴で人生だった。戦って、勝ち残って、のし上がる。それが俺の存在意義だった。それ以外の穏やかな、例えばお前らが望んだ世界に俺の居場所はあったか?何も言わなくていいぜ、答えは俺が一番よく知ってるからさ。
 だからな、おかしな話だが、俺が今いる地底の底、亡者が蔓延るこの穴は、俺にとってひどく居心地がいいのさ。ここは自由だからな。ヒトを殺そうが、セカイを滅ぼそうが、なぁんにも咎められねぇ。そう、これが真の自由だ。俺はその自由を、心から歓迎したよ。皮肉だよなぁ、死んでから自分の居場所を見つけちまうなんてよぉ。なぁ、笑ってくれよ。余計に虚しくなるだろう。あぁ、俺は意外にも、楽しくやってるぜ?
 俺はお前たちに感謝してるんだぜ、兄弟。素晴らしく醜いセカイと時間を本当にありがとな。だってそうだろう?お前たちが殺してくれなかったら、俺はあのセカイにおさらばできず、またこのセカイにも出会えなかったわけだ。だから俺は、ありがとうって、こう言ってるのさ。まぁ、ひょっとしたら、お前たちのことは好きじゃなかったかもしれねぇけどなぁ。


 おっと、まだ理解していないバカがいるみてぇだな。その手を俺は掴めねぇよ。掴む気にもならねぇ。だから早く引っ込めな。強いて言うなら、目ざわりってやつだ。差し出された糞を掴む奴がいるか?あぁ、だから、そんなに傷ついた顔すんなって。お前は本当、昔からそういう奴だよな。
 いいか?もし本当に俺のことを思って一緒に居たいと願うなら、お前は気づくべきだったんだ。俺とお前じゃ、致命的に違う部分があるってことをさ。その点においては、俺も友人とかいうクズ野郎に教わったんだ。いや本当、気づかせてくれたことに感謝してるぜ。そのおかげで、俺はこんなにも豊かになれたんだからなぁ。
 ここからは仮定の話をしようか。俺はもしかしたら、サテライトのどっかで、首でも吊って死んでりゃよかったのかもな。猫みたいに突然姿くらませてさ。臓器も汚物も全部たれ流しておっ死んでる俺を一番に見つけるのは、たぶんお前なんだろうなぁ。そんときはさ、ぼたぼた落ちる精液も全部舐めとってくれよ。そうしたら、きっと俺とお前はわかり合えたぜ?今となっちゃ、確かめる術もないけどな。
 そんなのは違うって?違わねぇよクソが。どの面下げてそんなことが言えるんだこの裏切り者。お前には理解できないだろうさ。結局、汚ぇもんを軽蔑することしかできないお前にはさ。小奇麗に整った顔に腹が立ってしょうがねぇよ。あぁ、ザーメンぶっかけてやりてぇ。そうしたらお前はどうするんだろうなぁ?汚い自分自身を軽蔑して鼻水垂らして泣きわめくか?それとも案外、気持ちいい気持ちいいって喘ぐかもな。もっと欲しいってねだる、赤ん坊みたいにさ。
 さぁ、こっちへ来いよ兄弟。一緒にあの頃みたいに騒ごうじゃねぇか。ほんの少しの間だけだけどな。そうしたら今度こそわかり合えるぜ。もう二度とわかり合えない、ってなぁ!



(かっこいい弱虫/過呼吸)より
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