※過去ねつ造
※チームサティスファクションが出来るまで


 腐れ縁というのもがあるが、果たして自分たちはどうなのか。ジャックやクロウはそうだと言い張るが、遊星はそうとは思えなかった。
 そもそも腐れ縁というのは、好ましくないが切るに切れない関係のことを言うのだろう。ならば、自分たちはこれに該当しない。何故なら、自分たちはこの関係を、自ら望んで続けているからだ。切る機会はすぐ目の前にあったのに、自分たちはあえて誰もその選択をしなかった。
 その事実は、マーサハウスから飛び出した今でも尚、行動を共にしていることからも窺い知れるだろう。縁を切りたければ、そう言って一人で歩きだせばよかった。例えそれが誰だろうとも、誰としてその背中を咎めることはなかった。幼馴染とはいえ、その人の人生の選択を遮る権利などないのだから。
 しかし、文句を言いつつも、自分たち三人の人生は未だこうして交差したままだ。それが傍から見てどうかは知らないが、遊星はそれでいいと思っていたし、ジャックやクロウもまたしかりだった。




 三人が行動の拠点として腰を据えたのは、バッドエリアの入り口近くの廃屋だった。もうすこしまともなところがいいとジャックは駄々をこねたが、近頃、デュエルギャングなるものの活動が活発化しており、目ぼしい廃墟等は彼らが占拠しているため、仕方のないことだった。
 それに、ここを選んだのにはもうひとつ理由がある。廃屋から数メートル離れたところにある廃ビルだ。ギャングたちの縄張りの中には入っていないのか、そこはまだ手がつけられていないうえに、(抗争に巻き込まれる可能性があるため、寝床にはしなかったが)サテライトでは貴重な、汲み取り式のトイレがあったのだ。生きている以上、排泄の問題は避けて通れない。
 廃屋は狭いうえに、隙間風はびゅうびゅうと吹きこんでくる。遊星は機械弄りを得意といたし、ジャックは既に、賭けデュエルの強者として名を馳せ、クロウは手くせが悪く、様々なものを盗んできたが、それでも、なんせ物資の少ないサテライトだったから、裕福な暮らしとは、縁遠いものがあった。
 誰もが、一度は考えたことがあった。もし、自分たちがサテライトでなく、シティに生まれていたとしたら。遊星もジャックもクロウも、相応の場所で相応な評価を受けて、もっとまともに暮らしていたのではないかと。
自分はこのまま、サテライトに沈められたまま一生を終えるのではないか。その思考はジャックが一番強く抱いていたようだったが、遊星やクロウも、その思いは否定できずにいた。
早く大人として自立し、自由を堪能したくて、こうしてマーサハウスを去ったが、本当にこれが、自分たちが焦がれた生活だったのか。今は到底、その思いを肯定することは誰にもできなかった。大人として独り立ちしたところで、こうしてサテライトという現実は常にひどくのしかかるのだ。この濁った世界のどこに、自由があるというのだろう。
 それでも、彼らはサテライトから逃れる術もなく、粗末な小屋で身を寄せ合うしかなかった。この仕打ちに耐えた先に、いったいなにがあるのか。先の見えない、混沌としたその世界に嫌気がさしながらも、彼らはそれを、己の運命として受け入れるより他なかったのだ。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -