#ac1_total# 「ん……おいしいけど…暑い…」 「あははーモノを食べると新陳代謝が良くなるって言うもんねー。仕方ない」 お弁当の配達帰りにバッタリいおなちゃんに会って、せっかくだからうちに来てお昼ご飯食べていかない?って誘って、今こうしていおなちゃんとわたしの家のお弁当を庭で食べているんだけど、さすがにこの炎天下の中…天気は良くても外でお昼はキツかったみたい。 「お天気良くても、やっぱり外はイヤだよね。ごめんね!お弁当持って部屋入って食べよう」 夏休み中ってこともあってあんまりいおなちゃんに会えなかったから今日偶然会って、嬉しくて、いおなちゃんにべたべたしたかったけど、いおなちゃんはあんまりべたべたされるのは好きじゃないみたいでイヤがるから、本当あんまりいおなちゃんを部屋に上げたくなかった。だって、部屋の中で二人きりになったら絶対いおなちゃんに触れちゃう。べたべたしちゃうから。 …でも、この暑さじゃあ仕方ない。わたしも我慢。我慢。 「ん…、そうね…。悪いけどお邪魔させてもらってもいいかしら?」 「うん、じゃあ行こっか」 笑顔でお弁当を持ち、家の中に入るけど、お母さんとお父さんとお姉ちゃんは今ちょうどお昼時で忙しいから絶対家に帰ってこないから余計にいおなちゃんと二人きりって意識しちゃって、ドキドキする。 「ん、涼しいし、美味しいわ」 「あははそれは良かった良かった」 エアコンをつけて数分たって部屋も涼しくなってきてとても快適な温度。それによりおいしく食べられる。 「それにしても、ゆうこの部屋初めて入ったわ」 そう言って、わたしの部屋を見渡すいおなちゃん。 あんまり見られたくないんだけどな。掃除もあんまりしてないし、というか汚いし。いおなちゃんが今日部屋に来るってわかってれば綺麗にしておいたのに。なんて日頃の行いを悔やんでしまう。 「でも、やっぱりゆうこの部屋だけあって、なんか落ち着く」 「ごふっ!」 「わ!ゆ、ゆうこ!大丈夫!?」 突然のデレに食べ物が詰まった。 なんて殺し文句を平気な顔して言うんだろういおなちゃんは!そんなこと言われたらいおなちゃんが触られるの好きじゃないって知ってても、触りたくなっちゃうよ! 「う、うん、だ、だいじょうぶっ、」 お茶を飲んで、なんとか咽を潤して、落ち着け落ち着けって自分に言い聞かせる。 いつもは、いおなちゃんの隣にはたいていグラサンが居て、いおなちゃんとあんまりべたべたと言うかイチャイチャできなかったけど、今日はなぜかグラサンもいないし、なんかいおなちゃんデレてきてるし、それに今日のいおなちゃんはなんかいつもより服装おしゃれだし、今日はもう、これは、いいのかな!? 「ん、ごちそうさま。ただバッタリ会っただけなのにお昼までご馳走になってごめんね ゆうこ」 「いいよいいよー。わたしも久々にいおなちゃんに会えて嬉しかったし」 「え、あ、」 わたしの言葉でいちいち顔を真っ赤にさせて俯くいおなちゃん。ほんと、そういうことされるとこっちも困るよ!ああ!いおなちゃんの頭なでなでしてあげたい! でも、そんなことしたら「やめて」って手を振り払われるんだろうな。そんなことされてもなでなでするけど。 でも、いおなちゃんのイヤがることはしたくない。やっぱり好きな人のイヤがる顔は見たくないからね。 でも、わたしは、本当はいおなちゃんに触りたい! 「わ、たしも…」 「え?」 「わ、わたしも、今日、ゆうこに会えて、その…、良かった…」 な、 なんでだからそう言うこと言うのかなあ!この子は!ああ!そんな、真っ赤な顔でちらちら見られて言われたら、わたしいおなちゃんのこと抱きしめたくなっちゃうよ!なんなの!?精神攻撃はやめてよ! 「嬉しいなあ。いおなちゃん今日はどうしたの?お洋服もおしゃれだし」 内心すごい混乱状態だけど、悟られないように笑顔でいおなちゃんに言ってみせる。 すると、テーブルを向かいにして座っていたいおなちゃんがいきなり立ち上がってわたしの隣にちょこんと体操座りする。 「ゆうこが、夏休み中全然会おうとか言ってくれなかったから…、よくゆうこが配達で通る道歩いてればゆうこに、会えそうな気がしてっ…、」 「え、ちょ、まっ、え!?じゃあ今日はそもそもわたしに会いに来てくれたってこと!?」 「気づくのが遅いわよ…、ばかっ」 そう言って、いおなちゃんはぽすっとわたしに寄りかかる。 わたしは、もうだめだった。 ぶちーんってなにか心の音がして、咄嗟にいおなちゃんを抱きしめてしまっていた。 「ご、ごめんね!いおなちゃんに会いたかったけどいおなちゃん空手の稽古とかで忙しいかなって思ってたらなかなか言い出せなくて!それにわたしも今日いおなちゃんに会えてすっごく嬉しいし!今日のその可愛い格好もわたしのためにしてくれたのかと思うともう、いおなちゃん大好きい!」 そう言って、ついついぎゅうっと力強くいおなちゃんを抱きしめてしまった。 「ん、ゆうこっ…」 ぎゅっと抱きしめているわたしの背中を、いおなちゃんが手を回して抱きしめ返してくれたことで、わたしはハッと我に返った。 「あ!ご、ごめん!」 ばっと、勢いよくいおなちゃんから離れる。 やばい、触っちゃいけないって思ってたのに!つい抱きしめてしまった!うわあああどうしよおお!って混乱しているといおなちゃんはビックリした顔をしてわたしを見る。 「えっと、ゆうこ、いきなりどうし…」 「ご!ごめんね!いおなちゃんあんまりべたべたされるの好きじゃないのに!ぎゅってしちゃって!つい!いおなちゃんがあんまりにも可愛いこと言うからつい、ぎゅってしたくなって!ご、ごめんなさいっ!」 手を合わせて謝るわたしに、いおなちゃんは目をぱちくりさせて、はぁっと大きなため息をついた。 「それは、あなたが人前で構わずべたべた触ってくるからやめてって怒ったんでしょ。」 「あ、あぅ…だから…ごめんなさいっ…」 「今は、誰かいる?」 「わたしといおなちゃんだけです…」 「だから、そういうことよ」 と言って、わたしの身体に身を預けて寄りかかってくるいおなちゃん。 「え!?それって!?」 「っ〜!察しが悪い!ばか!」 ゴンッと思いきり頭にげんこつされたけど、そんなの気にせず、またさっきみたいにぎゅって抱きしめると、いおなちゃんがさっきと同じようにわたしの背中をぎゅってしてくれることにとっても胸がドキドキする。 「いおなちゃん大好きだよ」 耳元でそう囁くと、いおなちゃんは肩をビクンとさせる。 その仕草が可愛くて、ついぺろっといおなちゃんの耳を舐めると「ひゃ!?」なんて可愛い声をあげるいおなちゃんに余計胸がドキドキする。 「ゆ、ゆうこっ!さっきまで汗かいてたから!汚いから!やめてっ!」 そんな真っ赤顔して、涙目でそんなこと言われたらやめるにやめられませんよ。いおなちゃん。 「ねえ、いおなちゃん、お昼も食べ終わったしさ、そろそろデザートのお時間じゃない?」 そう言って、いおなちゃんにまたげんこつされるまで深く唇をいただいた。 |