#ac1_total# あたしは、あいつが嫌い。 口を開けば、皆笑顔でハッピーなんてバカなことばっかり言って本当に嫌い。 あいつのこと見てると泣かしたくなって、いつもいつもあいつが嫌がることを言ってやっても、やってやっても、あいつは泣かない。 泣いたらハッピーが逃げちゃうとかまたバカなこと言って両手で無理矢理口を引っ張って、可愛げなんてどこにもない気持ち悪い笑顔をあたしに向けてくる。 「バッドエンドちゃんは、本当にわたしと顔が一緒だね。」 「言わば、あたしはあんたのクローンみたいな感じだしね」 あいつは本当にバカ。 あんなにあたしに嫌がらせされても、あたしに話しかけてきたり笑いかけてくる。本当にただのお人好しレベルじゃない。うざったい。 「クローンかぁ。でも、わたしとバッドエンドちゃん、どこも似てないよね」 「そーだね。あたしはあんたに似てるなんて本当に嫌。この顔も。あんたと同じ顔でたまらなく嫌。今すぐ顔の皮はがしたいくらい。」 あいつがいるだけでムカつく。 なんで、あたしはあいつと同じ顔をしているんだろう。それがたまらなく嫌になる。 鏡を見るたび、同じ顔のあいつを思い出してまたムカつく。本当にこの顔の皮はがしたいくらい。 「そんなことしたら痛いよ?」 「うるさいね。あたしがハッピーなんだからそれで良いでしょ?」 そう。あたしがハッピーだったらそれでいい。逆に自分とまるきり似た顔がボロボロになるのを見たあいつの反応のほうが少し楽しみなくらいね。まあ、痛いからやりたくないけど。 「わたしは、バッドエンドちゃんがハッピーって思うことはとっても良いことだと思うけど、わたしはみんなでハッピーになったほうが、もっともーっとハッピーだと思うの!」 でた。あいつのハッピー論。 なんで何度言ってもあたしの考えは変わらないのに、いつも目を輝かしてあたしに口論してくるんだろうなあ。あいつは。うざったくて仕方ない。 そう思うと、またあいつを泣かせたい衝動にかられる。だって、ムカつくんだもん。いつも口だけで。そう、口だけ。口だけ。 「ねえ、ハッピー?あたしたちは敵同士だってわかってる?あんたはいつかあたしと戦わなきゃいけないの。で、この世界のみんなをハッピーにするんでしょ?うん。良い話だねえ。でも気づいてんの?あたしのこと。あんたに倒されたあたしはね、ハッピーなんかじゃないってことをさ。」 前々から、前々から、思ってた。 なんでこいつは敵同士なのにあたしに絡んでくるんだろうって。うざったくて仕方ないって。 だから言ってやった。あいつが思ってるハッピーってのは誰かを不幸にしなきゃ得られないものだって。そう、あたしの言ったことが良い例だよ。 あたしの思ったことをあいつに言ってやって、今度こそ泣くか、なにも反応できないか様子を伺おうと横にいるはずのあいつのことを見ようとすると、がばっとあいつに抱きしめられた。 「わたし、バッドエンドちゃんのいじわるなところ嫌だな。」 と、気持ち悪い身体をあたしに密着させて、泣きそうな震え声で言うあいつ。人をいきなり抱きしめたと思ったら嫌だなんて、本当にムカつくやつだけど、気持ち悪いことにあいつの身体が温かくて、心地よくて、あたしは抵抗しないであいつに抱きつかれるがままでいた。 「あたしも、あんたのそうゆう馴れ馴れしいとことか嫌い。」 「あはは…、でもねバッドエンドちゃん。わたしバッドエンドちゃんと戦わなきゃいけないことが一番いや。」 そう言って、今度はぎゅうっと力強くあたしを抱きしめるけど、バカみたいに手が震えてる。 「わたしは、バッドエンドちゃんともっと仲良くしたいし、バッドエンドちゃんが大好きだからそんなの絶対できないよ!」 途中から声が震えて、最後には泣き叫ぶこの始末のバカ。泣いたらハッピーが逃げちゃうんじゃないの?ねえ。 だいたい、大好きってなに?いつもあたしに嫌がらせさせられて、泣きそうになって、それでもあたしが大好き?本当にあいつの考えてることはわからないし、甘い。甘すぎる考えばっかり。しかもあいつの涙があたしの肩にポタポタ落ちてきてすごく不愉快でたまらない。 でも、なんでだか、こいつの身体が温かくて離れたいと思わなかった。 まあ、肩に落ちてくる涙とうるさい泣き声くらいなら我慢してやるよ。 |